シークレット 14

シークレット

「これから会えるか?」

そう聞く道明寺に、あたしは「うん。」と答えると、どうやらもう家の前まで来ていたようで、慌ててあたしは玄関を出た。

「少し歩こうぜ。」

いつもより道明寺の顔が暗く見えるのは気のせいだろうか。

黙ってそのまま道明寺の隣に並びゆっくりと歩き始めると、

「牧野。」
と、あたしを見下ろしながら呼んだ。

「ん?」

「俺、……日本を離れることになった。」

突然の事に、その言葉をすぐには理解できないあたし。

「離れる?」

「ああ。NYに行く事になった。」

「いつ?」

「……来週の月曜日から。」

今日が金曜だから、3日後だ。

「それって、旅行ってこと?それとも、短期の留学?」

そのあたしの言葉に、黙ったままあたしの頭をクシャっと撫でたあと、

「3年は戻れねぇ。」
と、道明寺が言った。

「3年?!」

「ああ。
元々、半年後には留学して向こうでビジネスを学ぶ予定だったけど、急にババァが決めやがって。」

「ババァ…?」

「あー、俺の母親。
道明寺ホールディングスの取締役。
完全にヤバい女で、逆らったら殺される。」

自分の母親をそこまでディスる道明寺に思わず笑っちゃうと、急に真面目な顔になった道明寺があたしを見つめて言う。

「そういうおまえの笑った顔、側で見られなくなるんだな。」

「……。
もしかして、この間の写真が原因?」

「ババァの耳には入っているはずだけど、何も言ってこねぇ。それに、学校側からもあれ以来何も話がねえって事は、裏でババァが手を回したらしい。
俺を留学させるかわりに、違反は揉み消すって事だろう。」 

「そんなっ。
正直に何もなかったって言えば、留学も取り消せるかもしれないしっ、」

立ち止まって、道明寺を見上げてそう言うあたしに、この人はもう一度優しくあたしを呼んだ。

「牧野。」

「…ん?」

「一週間後に聞くって言ってた答え、ちゃんと決めたか?」

あたしの中ではもう答えは出していた。

「俺にとって、留学するかどうかは問題じゃねぇ。いずれは必ずしなきゃなんねー事だから。
ただ、おまえの答えをちゃんと聞きてぇ。」

「……。」

「そこで黙るなよ。
黙るってことはいい返事じゃねーんだろ。」

「……。」

「おまえさ、こんないい条件ねーだろ。相手は道明寺財閥の息子だぞ?しかも、見た目だって悪くねーし、成績だってトップだぞ。」

「急になによっ。自慢っ?」

「ああ!迷うことなんて1つもねーだろ!」

「……。」

そんな風に言われると、あたしだって何を躊躇しているのか分からなくなる。
ただ黙るしかないあたしに、道明寺は一歩近付いて俯きながら言った。

「女に好きだって言ったのはおまえが初めてだ。
そんな感情さえ持ったこと今までなかった。
……月曜、11時、NYに出発する。
それまでに、いつでもいい、付き合う気になったら連絡してくれ。待ってるからな。」

そう言ったあと、顔を上げてあたしを見つめた道明寺は、あたしの頭をポンと撫で去っていった。




月曜、11時。
道明寺がNYへ旅立つ時間。

その瞬間、あたしはいつものように大学の図書館で教科書を広げていた。

「いつでも連絡してくれ。」
道明寺は言ったけれど、結局あたしはあのまま彼の声を聞くことはなかった。

もしも違う選択をしていたら、あたしの人生は大きく変わっていたかもしれない。
ママが喜ぶような玉の輿も夢じゃなかったのかもしれない。

けれど、あたしはその一歩を踏み出さなかった。
なぜなら、怖かったから。

道明寺にとってはひと夏の恋愛かもしれないけれど、あたしにとってはそれだけじゃ済ませられない深い傷になりそうで。

だから、逃げたのだ。

何をしていても『綺麗』だったあの人を、あたしは永遠に綺麗な思い出にした。

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シークレットの前半戦はこんな感じで終了し、次回からは数年後の二人になります。お楽しみに♡

コメント

  1. はな より:

    ノォォォーーーーーーッッ
    つくしちゃーーーんっ!
    ノォォォーーーーーーッッ!!

  2. はれこ より:

    司一筋さんシークレットありがとうございました
    数年後の二人はどんな素敵な人になっているのかな?
    また 楽しみにしております。

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