牧野がバイトをしている店に行ってから3日後、校内を歩いていると、ベンチに座り日向ぼっこをしている類を発見。
相変わらず、昼寝をしに大学に来ているのかあいつは。
そっと近寄り隣に座ると、瞼がかすかに揺れ茶色の瞳が現れる。
「司、どしたの?」
「どしたのじゃねーよ。眠いなら家で寝ろ。」
「んんーっ、そだね。」
思いっきり伸びをしたあとに、そう言って立ち上がる類を見て、まだ寝るのかよと心の中でツッコミをいれたくもなる。
「司は?」
「俺はもう少しここにいる。」
「そう?じゃ、お先に。」
「おう。」
軽く手を上げて帰ろうとした類が、あっ!と何かを思い出したように、再び俺の隣に座った。
「なんだよ。」
「司、いいもの見せてあげるよ。」
「あ?」
ニコニコ顔の類はかなりレアで、類が開いた携帯を覗き込む。
すると、そこには、猫耳姿の牧野の写真が。
「おまえっ、いつの間に?」
「よく撮れてるでしょ。」
「っつーか、盗撮だな完全に。」
「それは置いといて、いる?いらない?」
いたずらっ子の目で俺を見つめる類。
「……いらねーよ。」
「ファイナルアンサー?」
「ああ。」
「じゃあ、俺の待受画面で使おうかな。」
「やっぱ、よこせ。
今すぐ俺に送れ。」
クックックっと肩を揺らしながら携帯を操作する類。すると、すぐに俺の携帯が短く鳴り、画像が送られてきた。
「おまえの携帯貸せ。」
俺は類から携帯を奪うと、類の携帯に入っている牧野の画像を消去する。
それを見て類がわざとらしく拍手をしながら言いやがる。
「わぁー、そういう所はさすがだね司。」
「うるせぇ。」
「司、」
「ん?」
「何がそんなに気に入った訳?」
「あ?」
「だから、あの牧野って子の、どこが気に入ったの?」
俺と類が二人で恋愛ごとを話すなんて予想もしてなかったが、今のこいつの目は真剣で、からかいはない。
「俺と目が合わねぇ。」
「はぁ?」
「あいつ、全く俺に興味ねーんだよ。
校内であいつの回りをうろついても、こっちを見ようともしねーし、店に行ったって、喜ぶどころか嫌な顔してただろ。」
「で?」
「だから、あいつがいつも何をしてて、どんな事に興味があって、どうやったら俺に興味を持つのか……とか、考えだしたら、止まんなくなりはじめて…」
「はぁー、ごめん司。
全く理解できない。」
「てめぇー。」
不思議そうに俺を見る類に、もう笑うしかねぇ。
「とにかく、司はあの子が好きって事だね。」
「……好きかどうかは分かんねぇ。
けど、女として意識してる。」
今まで全く女に興味がなかった俺が、こんな事を言う。
それだけで、類には充分理解できたんだろう。
「司、そろそろ行くわ。」
「おう。」
立ち上がり俺の肩をポンと叩いた類は最後に、
「図書館にいるはずだよ、あの子。」
と、笑いながら言った。
:
:
別に会いてぇわけじゃねーし。
別に用があるわけじゃねーし。
そう自分に言い聞かせても、足は自然と図書館に向かう。
図書館の2階の奥で勉強している牧野を見つけた。相変わらず、耳にはイヤフォンをつけているせいか、俺が来た周囲のざわつきに気付いていない。
それが少し悔しくて、俺は迷わずこいつの隣の席についた。
すると、誰かが来たという気配に気づき、机の上のノートやペンケースを自分の方に引き寄せる牧野。
でも、まだ俺という存在に気付いていない。
だから、俺はこいつの右耳に入っているピンクのイヤフォンに手を伸ばし、そっと取ってやった。
周囲の空気が一瞬驚きに包まれるのが分かった。
そして、ビクッと体を揺らして俺の方を見る牧野。
「よっ。」
「っ!……道明寺っ」
牧野の声が図書館に響く。
「暇か?」
「はぁ?」
「カフェテリアで少し休憩しようぜ。」
言っている意味が理解できないのか、ぽかんとした顔で俺を見つめるこいつに、俺は携帯を取り出してさっき類から入手した写真を牧野にだけ見えるように机の上においた。
「っ!なに、これ。」
「校内1位の女の裏の顔。」
「あんたっ、」
「カフェテリアに行くか?行かねーか?」
ニヤッと笑いながら言ってやると、牧野は怒った顔で教科書やペンケースを片付け始める。
そんなこいつの頭をガシガシと撫でてやり、
「奢ってやる。」
と、言うと図書館の中にいる奴らが一斉に固まった。

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コメント
いつも楽しませてもらってありがとございます。
カテゴリ違っているのでお知らせまで。
ありがとうございます!