シークレット 3

シークレット

夜、夕食をとるためダイニングルームに行くと、
いつもはいないババァが席についていた。

それを見た俺は、すぐに「回れ右」で部屋を出ようとした所で、今度は後ろから来た姉貴に首のあたりを捕まれ、引き戻される。

「頼む、勘弁してくれ。」
小声でそう伝えても、ニヤニヤ顔の姉貴に通用するはずもなく、
ズルズルとババァの正面の席に座らされた。

料理が一通り運ばれた所で、ババァから一言。
「そんなに難しかったかしら?英語のテストは。」
と、嫌味が炸裂。

「何点だったの?司。」
と、姉貴も楽しそうに聞いてくる。

「2問ミスっただけだ。」

「あら、それで1位から滑落?
それじゃあ、1位の子はほぼ満点ね。」

ミスった自覚はなかった。
ただ、長文読解の項目で自分の意見を英文で書く欄があり、そこで2箇所減点されていた。

あとは完璧だったから、いつもなら1位でもおかしくない点数のはずなのに、あの女はそれを上回る出来だったということか。

「英語が完璧じゃないと、仕事に支障が出るわよ。留学の時期を早めないとダメかしら。」
そう言って顔をしかめるババァに、

「半年後っていう約束だろっ。」
と、指を突きつける。

「司〜、このお姉様と一緒にNYに来る〜?」

「行かねーよ。」

「即答するんじゃないわよ全く。
それにしても、その1位の子って何者?」

「一般入試で入ってきた女。」

「えっ、女の子なの?!」

「ああ。牧野つくしっつー変わった奴。」

昼間、会ったあの生意気な女を思い浮かべながら言うと、姉貴が今日1番の楽しそうな顔で言った。

「つくしちゃん?
変わった名前ね〜。気に入ったわ。」



大学で今まで他の奴に興味を持つことなんてなかった俺が、テストで負けて以来、どうしてもあの女の動向が気になってしょうがねぇ。

どんな講義を取っているのか、サークルは入っているのか、どこでどれくらい勉強しているのか。

気になって探してみると、意外にあの女は大学内で過ごしている時間が長い事が分かった。

講義には休まず出席し、空いた時間はカフェテリアや図書館の隅で勉強している。
イヤフォンで何かを聞きながら、いつも一人行動。

あいつを目で追い始めて気付いたことがある。
それは、一度も俺と目が合わない事。

大学内をF4で移動していれば、嫌でも他の奴らの注目を浴びる。
それなのに、あいつはただの一度も俺たちに目もくれず無関心だ。

キャーキャー言われるのはヘドが出るほど嫌なのに、いざ無視されると気に食わねぇ。

今日もカフェテリアに入った瞬間、その場の空気が一瞬で変わり、痛いほどの視線を浴びる俺たち。

その中で、いつもどおり振り向きもしねぇあいつを、一番奥の席に見つけた。

「司?」
「どうした?」

お祭りコンビが呼び止めるが、それを無視して俺は女の方へ真っ直ぐ歩いていく。

そして、座る女の横に立ったとき、
ようやく気配に気づいたのか顔を上げた。

「……、道明寺?」

俺を無視した挙げ句、呼び捨てにするなんて上等だ。

「てめぇ。」
思わず漏れたその声に、

「何よっ。」
と、全然怯まねぇこいつ。

すると、俺の後ろから、
「こらこら司。
テストに負けたからって喧嘩売らない。」
と、お祭りコンビが俺を強引にその場から連れ去りやがる。

「離せっ、喧嘩なんて売ってねーよ。」

「分かったからおとなしくしろ司。」

「痛てぇーから離せっつーの。」

「暴れるな。」

F4専用のラウンジまで連れ出された俺は、ようやくこいつらから開放され、二人に蹴りを入れてやる。

そんな俺に総二郎が言った。

「最近ずっと目で追いかけてたと思ったら、急に襲いに行くから焦っただろバカっ、」

「あ?なんの話だよそれ。」

「おまえ、自分で気付いてねーのかよ。
あの牧野とかいう女の事、ずっと気にして追ってただろ?」

「ふざけんなっ、変な言い方すんじゃねーよ。」

「そうか?俺たちの勘違いか?」

「あたりめーだろ!」

おかしな事を言う総二郎にそう怒鳴って、ソファにドカッと座ると、
「そりゃ、良かった。
忘れてねーよな司。英徳の規律を。」
と、あきらがニヤッと笑いながら言う。

「あ?」

「俺たちの通う英徳大学は、」

そこまであきらが言うと、
類と総二郎が声を揃えて言った。

「恋愛禁止、だろ?」

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コメント

  1. はれこ より:

    えっ 英徳大学 恋愛禁止!
    このあとどうなる?
    司一筋さん
    楽しみにしております。
    我が家がある地域 雪が降り続いてます。
    が もっと大変になっているところもニュースで見ます。
    皆様お気をつけください。

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