夜、夕食をとるためダイニングルームに行くと、
いつもはいないババァが席についていた。
それを見た俺は、すぐに「回れ右」で部屋を出ようとした所で、今度は後ろから来た姉貴に首のあたりを捕まれ、引き戻される。
「頼む、勘弁してくれ。」
小声でそう伝えても、ニヤニヤ顔の姉貴に通用するはずもなく、
ズルズルとババァの正面の席に座らされた。
料理が一通り運ばれた所で、ババァから一言。
「そんなに難しかったかしら?英語のテストは。」
と、嫌味が炸裂。
「何点だったの?司。」
と、姉貴も楽しそうに聞いてくる。
「2問ミスっただけだ。」
「あら、それで1位から滑落?
それじゃあ、1位の子はほぼ満点ね。」
ミスった自覚はなかった。
ただ、長文読解の項目で自分の意見を英文で書く欄があり、そこで2箇所減点されていた。
あとは完璧だったから、いつもなら1位でもおかしくない点数のはずなのに、あの女はそれを上回る出来だったということか。
「英語が完璧じゃないと、仕事に支障が出るわよ。留学の時期を早めないとダメかしら。」
そう言って顔をしかめるババァに、
「半年後っていう約束だろっ。」
と、指を突きつける。
「司〜、このお姉様と一緒にNYに来る〜?」
「行かねーよ。」
「即答するんじゃないわよ全く。
それにしても、その1位の子って何者?」
「一般入試で入ってきた女。」
「えっ、女の子なの?!」
「ああ。牧野つくしっつー変わった奴。」
昼間、会ったあの生意気な女を思い浮かべながら言うと、姉貴が今日1番の楽しそうな顔で言った。
「つくしちゃん?
変わった名前ね〜。気に入ったわ。」
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大学で今まで他の奴に興味を持つことなんてなかった俺が、テストで負けて以来、どうしてもあの女の動向が気になってしょうがねぇ。
どんな講義を取っているのか、サークルは入っているのか、どこでどれくらい勉強しているのか。
気になって探してみると、意外にあの女は大学内で過ごしている時間が長い事が分かった。
講義には休まず出席し、空いた時間はカフェテリアや図書館の隅で勉強している。
イヤフォンで何かを聞きながら、いつも一人行動。
あいつを目で追い始めて気付いたことがある。
それは、一度も俺と目が合わない事。
大学内をF4で移動していれば、嫌でも他の奴らの注目を浴びる。
それなのに、あいつはただの一度も俺たちに目もくれず無関心だ。
キャーキャー言われるのはヘドが出るほど嫌なのに、いざ無視されると気に食わねぇ。
今日もカフェテリアに入った瞬間、その場の空気が一瞬で変わり、痛いほどの視線を浴びる俺たち。
その中で、いつもどおり振り向きもしねぇあいつを、一番奥の席に見つけた。
「司?」
「どうした?」
お祭りコンビが呼び止めるが、それを無視して俺は女の方へ真っ直ぐ歩いていく。
そして、座る女の横に立ったとき、
ようやく気配に気づいたのか顔を上げた。
「……、道明寺?」
俺を無視した挙げ句、呼び捨てにするなんて上等だ。
「てめぇ。」
思わず漏れたその声に、
「何よっ。」
と、全然怯まねぇこいつ。
すると、俺の後ろから、
「こらこら司。
テストに負けたからって喧嘩売らない。」
と、お祭りコンビが俺を強引にその場から連れ去りやがる。
「離せっ、喧嘩なんて売ってねーよ。」
「分かったからおとなしくしろ司。」
「痛てぇーから離せっつーの。」
「暴れるな。」
F4専用のラウンジまで連れ出された俺は、ようやくこいつらから開放され、二人に蹴りを入れてやる。
そんな俺に総二郎が言った。
「最近ずっと目で追いかけてたと思ったら、急に襲いに行くから焦っただろバカっ、」
「あ?なんの話だよそれ。」
「おまえ、自分で気付いてねーのかよ。
あの牧野とかいう女の事、ずっと気にして追ってただろ?」
「ふざけんなっ、変な言い方すんじゃねーよ。」
「そうか?俺たちの勘違いか?」
「あたりめーだろ!」
おかしな事を言う総二郎にそう怒鳴って、ソファにドカッと座ると、
「そりゃ、良かった。
忘れてねーよな司。英徳の規律を。」
と、あきらがニヤッと笑いながら言う。
「あ?」
「俺たちの通う英徳大学は、」
そこまであきらが言うと、
類と総二郎が声を揃えて言った。
「恋愛禁止、だろ?」
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コメント
えっ 英徳大学 恋愛禁止!
このあとどうなる?
司一筋さん
楽しみにしております。
我が家がある地域 雪が降り続いてます。
が もっと大変になっているところもニュースで見ます。
皆様お気をつけください。