「誰だ?牧野つくしって。」
その声に恐る恐る振り向くと、そこには初めて間近で見るF4の姿。
この学園では有名な彼ら、花の4人組。
遠目では見かけた事はあったけれど、こんな間近で見るのは初めてだ。
真ん中のくるくる頭が確か道明寺司。
そしてその隣であたしの顔を覗き込んでいるのがその取り巻きたち。
「司、おまえ英語2位だってよ。」
「マジかよ、司が1位以外とったの初めてじゃねぇ?」
「誰だよ、この牧野って。聞いた事ねーけど。」
道明寺以外の3人が楽しそうにそう話す中、本人は超絶不機嫌な顔で掲示板を見つめている。
まいったなぁ。
今ここにいるのは、完全に場違い。
そう思ったあたしは、ゆっくりとその場をフェードアウトしようと、くるりと姿勢を返したとき、
「おい、そこの女。
おまえか、牧野つくしって。」
と、低い声が響いた。
「……え?」
「さっき、掲示板見て喜んでたよな。
英語の1位はおまえかよ。」
「……。」
大きくて形のいい瞳があたしを真っ直ぐに見つめる。
「……そう、ですけど。」
小さく呟くと同時に、
道明寺以外の3人が騒ぎ出す。
「マジかよっ、つくしって変わった名前だと思ったけどよ、女か。」
「帰国子女か?今までランキングに入ってなかったよな?」
「司、ライバル出現だね。」
180cm以上ある彼らが、157cmのあたしを見下ろして楽しそうに騒ぐ中、道明寺司だけがあたしを睨みつけてくる。
「おまえ、何年だ?」
「2年だけど。」
「英徳高校にいたか?」
「○○高校。」
都内の公立高校の名を出すと、道明寺の眉間にシワが寄る。
「家は?なんの経営してる?」
「は?」
「だから、父親はどこの会社だよ。」
「あんたになんの関係があるの?」
あたしのその返答に、道明寺の隣に立つ男がヒューっと口笛を吹かす。
「てめぇ。
道明寺と取引してたら痛い目にあうぞ。」
「はぁ?
うちの親は経営者でも社長でもないからご心配なくっ。」
吐き捨てるようにそう言ってあたしはスタスタと歩き出した。
はぁーーー、腹立つ。
噂通りの嫌な奴!
良いのは見かけだけで、性格は腐っているって誰かが言ってたのを聞いたことがある。
友達はあの取り巻きだけ。
近寄る女性には暴言を履きまくり。
わがままで横暴な男だと言う噂は間違っていなかった。
よくやった、あたし!
1教科でもあの男を倒したのだ。
このまま勉強を続けて、あいつがいる間はずっと勝ち続けてやる!
拳を握りしめてそう決心した。
:
:
:
「あの女っ……。
あきら、あいつの事調べてくれ。」
校内のカフェテリア。
F4専用のラウンジに戻るなり、タブレットを持つあきらにそう頼む。
「牧野つくしだろ?
さっきから調べてんだけど、検索に引っかからねぇんだよ。」
「俺に貸せ。」
あきらからタブレットを奪った総二郎が何やら調べていると、
「おー、こんな所にあったぞ。」
と、楽しそうに言った。
「大学からの編入組で、しかも一般入試で入ってきてる。
親は……マジかよ聞いた事もねえ会社だぞ。
株式会社〇〇の総務係長。
本人は、国公立の大学を3つ受験してるけど、全部落ちて英徳だけが受かったらしい。」
一般入試で入ってくるのは全体の3%ほどしかいない。
しかも、親父の会社の名前を聞いてもピンと来ないと言うことは、コネを使った入学でもなさそうだ。
「入試の成績は?」
「おー、かなりいいぞ。
特に英語と国語はトップクラス。
これなら国公立も受かってるはずだけどな。」
知れば知るほど謎が出てくる女。
「とにかく、司。
負けは負けだ。
邸に帰ったらヤキが入るんじゃねーの?」
総二郎のその言葉に、ババァと姉貴の顔を思い出して、
「めんどくせぇ。」
と、呟いて頭を抱えた。
にほんブログ村
↑ランキングに参加しています。応援お願いしまーす♡
コメント
新しいお話し 嬉しいです。
大学生になって知り合うのですね。
続き楽しみ~♥️