「記憶、戻ったの?」
信じられないという顔でそう聞く牧野と姉ちゃんに、
「ああ。」
と、笑って返してやる。
「嘘……でしょ。」
「ほんとだ。」
「でも、どうして…」
「姉ちゃんの強烈なパンチがクリーンヒットした。」
俺だってこんな事で記憶が取り戻せるなんて考えてもいなかったが、まじで頭の中の靄が完全に吹き飛んだ。
「信じらんない。」
それでも疑う牧野に言ってやる。
「信じねーなら、信じさせてやろうか?
牧野つくし、12月28日生まれ。
身長160cm、体重47kg、血液型B型。
俺との出会いは英徳高校で、ファーストキスは静の帰国パーティー。
俺たちの初めての夜は、おまえがNYに来た時に、」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って、バカっ!
それ以上言ったら殺すっ!」
慌てて俺を止める牧野。
その牧野の身体を思いっきり抱きしめ、耳元で言ってやる。
「牧野、会いたかった。」
「……うん。おかえり。」
:
:
それからは、邸はお祭り騒ぎ。
姉ちゃんがババァやタマに俺の記憶が戻ったことを言いに行き、代わる代わる俺の部屋にみんながやってくる。
夕食が終わったあとも、
タマから情報を聞きつけた西田までわざわざ邸に来て、俺じゃなく牧野に「良かったですね。」と、言いに来る。
はじめは一緒に喜んでた俺も、そろそろ限界だ。
せっかく記憶が戻ったんだから、牧野と二人きりになりてぇ。
「牧野。」
「ん?」
「逃げようぜ。」
「は?」
キョトンと俺を見上げるこいつの手を引き、姉ちゃんに見つからないようにエントランスを抜け出す。
「道明寺っ、どこに行くの?」
「おまえに見せたい場所がある。」
そう言って牧野を俺の車に乗せ、二人で逃げ出した。
:
:
邸から車で20分ほどした所に、なだらかな丘がある。
昔、親父が俺と姉ちゃんの遊び場として買い取った土地だ。
今は周りの木々もきちんと整えられ、細い道には外灯も付き、道明寺の家紋が入った門も建てられている。
ここに牧野を連れてくるのは初めてだ。
「道明寺、ここは?」
「俺のお気に入りの場所だ。
朝になると朝日が昇るのを見る事ができるし、夜になれば満点の星が眺められる。」
そう言って空を見上げると、今日も降り注いで来るかのような星が輝いている。
「すごい……」
「だろ?」
「こんな場所、あったんだ。」
「ああ。おまえの為に取っておいた。」
そう言って牧野の手を握りゆっくり歩くと、丘の上に一本の看板が見えてきた。
外灯の光に照らされて見える看板を見て、牧野が驚いたように言った。
「これ、どういう事?」
「書いてあるとおり。」
「あたしたちの、……マイホーム?」
「ああ。」
看板には
『tsukasa&tsukushi Myhome』
と、記されている。
「俺たちの新居を建てて、二人でここに暮らそうぜ。その為に、ずっと前から準備してたんだ。
本当は、帰国したら真っ先におまえをここに連れてくる予定だった。それなのに、事故にあって……。
ごめんな牧野。」
「ううん。」
「予定より1年遅くなったけど、
牧野、俺と結婚してくれ。」
満点の星空に包まれながらの、2回目のプロポーズ。
「また記憶なくしたら、次はないからね。」
「おう。」
にほんブログ村
↑ランキングに参加しています。応援お願いいたしまーす♡
もうすぐ最終話ですよ〜。
でも、その前に司少し暴れますよ〜。うひひー。
コメント
今年も 楽しませていただけそう‼️
司くん 新居予定地準備してたんだ 驚き‼️
一あばれ二あばれでも 楽しみにしております。
今年もよろしくお願いしまーす♡