「女って、何考えてんのか分かんねーな。」
久しぶりに会うF3を前に、俺は心底感じてる事を口にする。
「あ?どうした司。」
「おまえが女を語るなんて珍しいじゃん。」
目をキラキラさせて食いついてくるお祭りコンビを横目に、
「司に分かるくらいなら、小学生でも分かるんじゃない?」
と、類が言いやがる。
「類っ、てめぇー!」
「だってそうでしょ?
今時、小学生の方が司より恋愛経験豊富だよ。」
その類の言葉に、ぎゃはははーと笑い転げるあきらと総二朗。
いつもなら、そこで俺が二人に、いや三人に蹴りをいれて終わる所なのに、今日は黙ってる俺を見て、三人が不思議なものを見るような目で俺を見つめてくる。
「だよな…………。
確かに恋愛なんてしてこなかったから、駆け引きなんて知らねぇし、女を喜ばす言葉なんて言えねぇしな。
けど、好きなら好きでそれ以外何があんだよっ。
」
そう言って頭をワシャワシャする俺。
「司、おまえなんのこと言ってんだ?」
「もしかして、好きな女でも出来たのか?」
俺の言動を可哀想な目で見やがるこいつら。
それに何も答えない俺を見て、類が呟いた。
「好きになったんだ、司。」
そのあと、どこかで見た刑事ドラマのごとく、あきらと総二朗から徹底的に吐かせられた。
あの日、滋が泥酔してるのを放置して二人で消えたこと。
その夜、関係を持ったこと。
そして、忘れられなくて呼び出して、2度目の逢瀬のこと。
昨日はマンションまで殴り込みにいって、勘違いが分かって、ホッとして好きだと告白したこと。
そして、その返事は貰えなかったこと。
唯一、言わなかったことは、はじめてのキスはあいつからだったってことは話さなかった。
それは、俺にとっても汚点だから。
あと数分遅ければ、俺が仕掛けてたはずだから。
すげー笑われるのを覚悟で話した。
それなのに、全部聞いたF3は、なぜか嬉しそうに「カンパーイ」とか言いながら飲み始める。
あきらに至っては、俺の頭をガシガシとかき混ぜながら、「そうか、そうか、俺は嬉しいよ」
って、泣く真似までしやがって。
「笑わねーのかよ。」
「バカか、笑うわけねーだろ。」
「…………。」
「おまえが女の話するのって、久々じゃね?
あのとき以来だよな?
昔、司がすげー酔ったときに、『俺の初恋は一瞬で終わっちまった。』ってバカみたいに荒れてたことあったよな?」
「うるせーっ」
「それ以来、おまえから女の話、全然聞かねーから、まだ引きずってんのかと思ってた。」
確かに、俺の初恋はあの日、一瞬で終わった。
あんなに、短時間で急激に女に惹かれたのは初めてだった。
好きだと伝える前に終わった恋。
あいつを忘れることが出来なかった訳じゃなく、あいつ以上に惹かれる女に巡り会わずにここまで来ちまった。
けど、あの女、牧野つくしにはなぜかはじめから強烈に惹かれていった。
俺にこんな感情があるんだと自分が一番驚くくらい、あいつに惚れてる。
理由なんて簡単に言えねぇけど、
あの気の強いとこも、怒った顔も、全然なびかねぇ性格も、時々見せる破壊力抜群の笑顔も、全部が俺のツボだ。
「司、なにデレッとしてんだよ。
甘い夜を思い出してんのか?」
「バっ、ちげーよっ。」
「でもよ、考えたらおかしくね?
なんで司の告白にスルーな訳?
一応、おまえらそういう関係な訳だろ?
それとも、あれか?
体だけの…………流行りのセフレ?」
「総二朗、マジでぶっ殺すぞっ。」
そう怒鳴りながらも、俺も納得がいかねぇ。
「少し距離おいて様子見ろよ。
そいつがおまえに気があれば、向こうから寄ってくるだろーし。
ここで恋の駆け引きだよっ!
司、ガツガツ押すだけが男じゃねーよ。
引くとこは引けっ。そしたら女が引っ掛かってくる。」
総二朗のやつ、完全に面白がってやがる。
あの女に、そんな駆け引きなんて通用するとは思えねぇ。
けど、あいつを手にいれるためなら、どんな手段でも試してみるか…………。
そう、その時は思ったはずなのに、今日で3日あいつと接触がないだけで、俺は完全に腑抜けになった。
やっと一休みついたランチタイム。
「西田、わりぃ、10分だけ充電させてくれ。」
「はい?……携帯の充電でしょうか?」
「いや、俺自身の充電だ。」
そう言って、我慢の限界の俺は総務課のフロアへと下りていった。

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