無敵 14

無敵
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「えっ!!
思い出したの?道明寺っ!」

「ああ。」

「ほんとっ?!凄いっ、やったー!」

牧野と両親と、何がなんだか分かっていない弟と、みんなで無茶苦茶喜んでいるけれど、肝心な事が伝わってねえ。

「牧野。」

「ん、なに?」

「弟だけだ。」

「え?」

「だから、思い出したのは弟だけだ。」

その俺の言葉に、さっきまで盛りあがっていた家族が一気に静まりかえる。

「どういうこと?記憶が繋がったんじゃないの?」

「繋がったのは弟の記憶だけだ。
顔を見た瞬間、色んなこと思い出した。」

「……、あたしの事は?」

「思い出してねえ。」

「……へー、そう。」

俺の胸をバシッと叩いた後、
「鍋食べよう。進、手洗って来て。」
と、拗ねる牧野。

しょーがねーだろ。俺だって自分の頭をかち割って、記憶の線を繋げれるもんなら繋げてぇ。
どう絡まったら、愛しい女を忘れて、その弟の記憶だけ戻るんだよ。

「道明寺さんにとって、俺ってそんなに印象深かったんですね〜。」
と、超ご機嫌になった弟を囲んで、久しぶりに鍋を食った。

昔、弟に勉強を教えたこと。一緒に銭湯に行ったこと。社会人になった時、スーツをプレゼントしたこと。
鮮明に思い出した。

「少しでも記憶が戻ってきて良かった。」
と、涙ぐむ父親に促されるまま酒を呑み、腹いっぱい鍋を食った。

夕食の食器がすべて片付いた頃には、だいぶ酒が回った俺と弟、そして、すでに赤い顔でゴロンと寝てしまった父親。

時計を見ると10時近い。
そろそろ帰るか…と、立ち上がった時、牧野が言った。

「道明寺、泊まっていく?」

「あ?」

「呑んだから運転できないでしょ。
それに、いつもここに来たらパパに呑まされて泊まっていくっていうのが恒例なの。」

「そうそう、毎回なの。
今日も布団用意してあるから泊まっていってください。」
と、牧野の母親も。

明日は会社も休みだから問題ねえけど、一応西田には居場所を知らせる必要がある。

「一つ、電話だけしてくる。」
牧野にそう言って家を出た。



酔っ払いには気持ちいい夜風。

西田に
「今日は邸に戻らないから、何かあったら携帯に。」
と電話をして家に戻ろうとした時、玄関からスリッパでパタパタと俺の方に駆け寄ってくる弟の姿。

「道明寺さん。」

「どうした弟。」

「酔っ払って倒れていないか心配で。」

ニコニコ笑って俺の隣に座り込む弟は、相変わらず人懐っこくて俺にとっても可愛い存在だ。

「道明寺さん。」

「ん?」

「ほんとに俺のこと思い出したんですか?」

「ああ。おまえの顔見た瞬間思い出した。」

「マジかー。マジで嬉しいな。
姉ちゃんには恨まれるかもしれないけど、最高に嬉しいです。」

思いっきりはしゃぐ弟に俺も可笑しくなって、二人で夜風に当たりながら笑い合う。

「やっぱ最強だな道明寺さんは。」

「なんだよそれ。」

「相変わらず格好いいし、それに…、」

「それに?」

「姉ちゃんの事、大事にしてくれてるし。」

記憶をなくしたと聞いて、牧野だけじゃなく牧野の家族も心配してただろう。

「心配させて悪かったな。」

「いえ。両親も今日の道明寺さんを見て安心したと思います。
姉ちゃんの事を忘れて、もう2度とうちには来てもらえないかと思ってたので。」

「記憶はなくても、感覚で覚えてる。」

「え?」

「俺にとって、あいつが大事な女だってことは全身で感じ取ってる。
だから、………心配すんな。」

色々言いたいことはある。
色々説明したいこともある。
けど、すべてひっくるめて、
「心配すんな。」俺に任せろと。

「はぁーーー、道明寺さんと姉ちゃんってまじで運命の相手なんですよねきっと。」

「運命の相手?」

「道明寺さん、昔から姉ちゃんの事、運命の相手って言ってたんです。俺にはあいつしか考えられないって。」

「キザな台詞だな。」

「ですよね、アハハハー。
でも、何度も何度も言ってましたよ。
そんな二人が俺にとっては最強で無敵な存在ですから。」

「無敵?」

「はい。
どんなライバルや試練があっても、必ず離れなかったし、信じ合ってたし。
今回の記憶を無くしたと聞いたときも、きっと二人なら乗り越えると思ってたので。」

無敵の二人か。
出会って10年。その間、殆ど離れ離れだった俺たち。

どんな風に時間を過ごしてきたかは思い出せないが、ただただ強く惹かれ合っている事は分かる。

「弟。」

「はい?」

「心配すんな。」

もう一度真っ直ぐに弟の顔を見て言うと、

「はい!」
と、またその人懐っこい顔で笑った。

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