コンビニまでの道をゆっくりと歩く俺たち。
きっと、ここも何度も通った道なんだろう。
「前にも、二人で歩いたんだよな俺たち。」
「うん。」
「何話しながら歩いてた?」
「んー、なんだろ。いつもくだらない事ばっかり。でも、……」
「でも?」
その先をなかなか言わねぇこいつに、
「言えよ。」
と促すと、
目線をそらして早口で言う。
「いつも手を繋ぎながら歩いてた。」
そっかぁ。
そうかもしれねーな。
たぶん、F3が言うように、俺はこいつに心底惚れていて、いつも甘く接していたに違いない。
言った牧野も気まずくなったのか、
「あっ、コンビニっ。」
と、駆け足で逃げていく。
店に入ると、俺は入り口横の本コーナーで立ち止まり、いくつかの雑誌に目を通す。
たまたま総二郎が載った経済紙があり、斜め読みしていると、
「道明寺」
と、牧野が呼ぶ声。
振り向くと、手にはビニール袋を持っていて、もう会計を済ませたようだ。
「ちょっと待ってろ、俺も買い物してくる。」
そう言って慌てて店の奥に入る。
スイーツコーナーから2つ手に取り、急いで金を払うと、雑誌を立ち読みしている牧野の側に戻る。
「行くか?」
「うん。」
そして、また来た道をゆっくりと引き返す。
5分くらいで着くあっという間の時間。
家の前に着き、さっき買った袋を牧野に差し出す。
「ん?」
「おまえにやる。」
「え、なに?」
受け取って袋の中を見た牧野。
すると、黙ったままのこいつの目になぜか大粒の涙が貯まりはじめた。
「っ!おいっ、なんだよ。」
「だって、」
こいつが泣く意味が全く分からねぇ。
そんな俺に、今度は牧野が、自分が買った袋を俺に差し出す。
訳もわからずその中身を見た俺は固まった。
さっき俺が買ったスイーツ2個と全く同じものだったから。
「いつもあたしが買うやつなの。
どうして?思い出したの?」
「いや。」
「でも、これ」
「ああ。無意識に買った。
おまえにやろうと思って無意識に。」
確信する。
記憶は途切れていても、俺の脳は牧野を確実に覚えている。
「牧野。」
「ん?」
「俺、今は回線がうまく繋がってねぇけど、おまえといると、きっと記憶が溢れ出してくると思う。」
「ほんと?」
「ああ。
脳に刺激が伝われば。」
「…刺激って……?」
俺を見上げるこいつの目にはまだしずくがたまっていて、それに引き付けられるように頬に手を伸ばすと、目を閉じる牧野。
そのはずみでまた、涙が頬を流れる。
親指でその涙をぬぐい俺は言う。
「こういう刺激。」
そう言ったあと、ゆっくりと牧野に近付き唇を重ねると、
小さくビクッと震えるこいつ。
堪らなくて、もう一度、さっきよりも長くキスをする。
脳に刺激が届くように。
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コメント
ナイスアイデア!
刺激でシナプスが繋がるといいね!司くん!!
刺激を求めすぎないと良いのですが、司くん。
今晩は、司くん大好きで司一筋さんと大ファンです
つかつくが好きでもっと読みたいんです
此れからも、沢山読ませて下さい
了解ですぞ!頑張って書きますよっ!
きゃー 二人で同じスイーツ買ったなんて
しあわせ♥️
甘々ですから〜