いつものバーに行くと、奥の個室にF3が揃っていた。
ガキの頃から腐れ縁の俺たちは、相変わらずつるむ仲。
ハイボールを2杯ほど呑んだところで手が止まった俺に、
「司、呑まねーの?」
と、総二郎が聞く。
「…おう、今日はこれぐらいにしとく。」
「なんだよっ、仕事残ってるのか?」
「いや、そーじゃねーけど。」
「じゃあ、付き合えよ。」
自分が呑んでいたグラスを滑らせてくる総二郎。
「今日は……もう呑まねぇ。」
「どうした司。なんか心配ごとか?」
あきらも心配そうに俺を覗き込む。
「いや、……。
呑みすぎるなって言われたからよ。」
「あ?誰に。」
「だから、……」
口籠る俺を見て、類が楽しそうに言う。
「牧野でしょ。」
その言葉に何も言い返さないのを見て、あきらと総二郎が騒ぎ出す。
「おいおい、司く〜ん。
いつからおまえは女に従う男になった?」
「うるせぇ。」
「記憶は戻ってねーんだろ?
それなのに、牧野の言うことは聞くって事はもしかしてぇ〜?もしかするのかい司くん。」
テーブルをドンドン叩きながら面白がるこいつらには、俺の苦労は絶対分からねぇだろう。
「なんとでも言え。」
そう言って総二郎にグラスを返すと、
「好きなのか?牧野を。」
と、笑いながらも真っ直ぐに聞く総二郎。
「……わかんねぇ。……ただ、」
「ただ?」
「嫌い…ではねぇ。」
今のところそう答えるしかない。
「司、よく聞けよ。
おまえにとって女は好きか嫌いかしかねーぞ。
好きは牧野だけで、あとの女は全否定だったんだからなおまえは。
だから、嫌いじゃねぇって事はイコール好きだって事だろ。」
「そんな単純じゃねーだろ。」
「いやいや、単純だったんだよおまえは。
バカがつくほど牧野に惚れてたからな。」
何度も聞かされたこの話。
その感情が思い出せないからもどかしい。
「今の俺にとってあいつは、
側にいても嫌じゃねえって事は確かだ。
けど、あいつに触れたいと思うほど、女としては見てねぇ。」
そう言って、頭を抱える俺に、横から爆弾を落としてくる男がいる。
「俺は牧野に触れたいと思うけどな。」
「あ゛?」
「もちろん女としてね。」
「類っ!」
「バカッ!」
お祭りコンビが慌てて類の口を塞ぐ。
目の前でバタバタ騒ぐこいつら3人に、俺は殴るフリをしながら言ってやる。
「類てめぇ、もう一度言ったら殺すぞ。」
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コメント
そりゃあ、もう好きってことじゃないのかな?
ですよねーーー。記憶なくした半年でまた好きになってる単純男ざんす。つくしにだけしか反応しないそういう能なものでお許しを♡
1日に2話も★
ありがとうございますm(_ _)m
いつも更新を楽しみにしています。
コロナ禍で、生活の中で不自由さが感じますが、こちらのサイトに癒やされてます。このご時世、お体にはご自愛下さいませ。
ありがとうございます!少しでも癒やしになれば♡お体ご自愛くださいませ〜。