無敵 2

無敵

いつものバーに行くと、奥の個室にF3が揃っていた。

ガキの頃から腐れ縁の俺たちは、相変わらずつるむ仲。

ハイボールを2杯ほど呑んだところで手が止まった俺に、
「司、呑まねーの?」
と、総二郎が聞く。

「…おう、今日はこれぐらいにしとく。」

「なんだよっ、仕事残ってるのか?」

「いや、そーじゃねーけど。」

「じゃあ、付き合えよ。」

自分が呑んでいたグラスを滑らせてくる総二郎。

「今日は……もう呑まねぇ。」

「どうした司。なんか心配ごとか?」
あきらも心配そうに俺を覗き込む。

「いや、……。
呑みすぎるなって言われたからよ。」

「あ?誰に。」

「だから、……」

口籠る俺を見て、類が楽しそうに言う。

「牧野でしょ。」

その言葉に何も言い返さないのを見て、あきらと総二郎が騒ぎ出す。

「おいおい、司く〜ん。
いつからおまえは女に従う男になった?」

「うるせぇ。」

「記憶は戻ってねーんだろ?
それなのに、牧野の言うことは聞くって事はもしかしてぇ〜?もしかするのかい司くん。」

テーブルをドンドン叩きながら面白がるこいつらには、俺の苦労は絶対分からねぇだろう。

「なんとでも言え。」

そう言って総二郎にグラスを返すと、
「好きなのか?牧野を。」
と、笑いながらも真っ直ぐに聞く総二郎。

「……わかんねぇ。……ただ、」

「ただ?」

「嫌い…ではねぇ。」

今のところそう答えるしかない。

「司、よく聞けよ。
おまえにとって女は好きか嫌いかしかねーぞ。
好きは牧野だけで、あとの女は全否定だったんだからなおまえは。
だから、嫌いじゃねぇって事はイコール好きだって事だろ。」

「そんな単純じゃねーだろ。」

「いやいや、単純だったんだよおまえは。
バカがつくほど牧野に惚れてたからな。」

何度も聞かされたこの話。
その感情が思い出せないからもどかしい。

「今の俺にとってあいつは、
側にいても嫌じゃねえって事は確かだ。
けど、あいつに触れたいと思うほど、女としては見てねぇ。」

そう言って、頭を抱える俺に、横から爆弾を落としてくる男がいる。

「俺は牧野に触れたいと思うけどな。」

「あ゛?」

「もちろん女としてね。」

「類っ!」
「バカッ!」

お祭りコンビが慌てて類の口を塞ぐ。

目の前でバタバタ騒ぐこいつら3人に、俺は殴るフリをしながら言ってやる。

「類てめぇ、もう一度言ったら殺すぞ。」

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コメント

  1. 花男ファン より:

    そりゃあ、もう好きってことじゃないのかな?

    • 司一筋 司一筋 より:

      ですよねーーー。記憶なくした半年でまた好きになってる単純男ざんす。つくしにだけしか反応しないそういう能なものでお許しを♡

  2. めぐママ より:

    1日に2話も★
    ありがとうございますm(_ _)m
    いつも更新を楽しみにしています。
    コロナ禍で、生活の中で不自由さが感じますが、こちらのサイトに癒やされてます。このご時世、お体にはご自愛下さいませ。

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