総務課の牧野さん 11

総務課の牧野さん

「んっ、……くちゅ……はぁ…………
し……しゃちょう……くちゅ…………」

キスをされながらも何かを言おうとするから、そのたびに俺の舌の侵入を受け入れて更に深みに陥るこいつ。

ただでさえ俺よりもだいぶちいせー体なのに、下を向かれたらキスがうまく出来ねぇ。
こいつの両頬を包み込んで上を向かせようとしたその時、俺の片手に、さっきあの女から奪った部屋のカードキーが握られてるのが目に入った。

チラッと横目で部屋番号を確認した俺は、名残惜しいけど一旦こいつから唇を離し、腕をつかんでカードキーの部屋番号まで廊下を進んだ。

ピッという音とともに開いた部屋へこいつを押し込める。
どこかで見たこの状況。
そうあの夜と全く同じ。

けど、今日はお互いほとんど酒は入ってねぇ。
酔った勢い……の理由は使えない。
扉に背中を預けたままのこいつの目をじっと見つめると、困ったように見つめ返してきた。

そんなこいつの唇に無意識に手が伸びて親指で優しく触ると、ぷにゅとした感触がする。
それが気持ちよくて、親指で何度もぷにゅぷにゅしてやると、
「なんですかっ。」
と拗ねて睨んでくる。

「気持ちくね?」

「全然」

「そうか?俺はすげー気持ちぃ。」

「…………。」

「ここだけじゃねーよ。おまえの全部が気持ちぃ
……。」

「……んっ……くちゅ……くちゅ」

たぶん、部屋に入って、まともに会話したのはその時ぐらいだったかもしれねぇ。

あとは、最中に
「すげー可愛いい」とか
「もっと舐めさせろ」とか
「俺の首に掴まれ」とか
…………そんな事を口にしたのは覚えてるけど、
夢中で愛して、夢中で感じて、何を話したかなんて記憶にねえ。


前に抱かれたときは酔っていたのと、恥ずかしいので気付かなかったけど、この人はこんなときでも色気駄々漏れの目で見つめてくる。

キスの最中も、挿れる直前も、座ったまま抱き抱えられるように繋がれている時でさえ、
切なそうに、何かを耐えているようにあたしを見つめてくる。

その視線に耐えきれなくてあたしが目をつぶると、
「ちゃんと俺を見ろよ」って…………。

激しく翻弄されて、会話らしい会話なんてほとんど出来なくて。
それなのに、
「我慢すんな、声聞かせろよ」とか
「どこ触られるのが気持ちぃ?」とか
「隠すなもっとよく見せて」とか
この人は、あたしの耳元で甘く囁く。

囁く言葉は違うけど、その優しい手も、唇も、律動も、あの時と変わらない。
それは懐かしいような、悲しいような…………。

四年前、一度だけこの人に抱かれたときも、その優しさに泣きそうになったことを、眠りにつく間際にあたしは思い出した。

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