北海道に降り立ったあたしは、今、西田さんから貰ったメモを握りしめタクシーに乗っている。
道明寺が言っていたとおり、北海道の寒さは想像以上に身に染みる。温室育ちの坊っちゃんにはさぞ辛いだろう。
タクシーに揺られ30分程したところで、
「この先のマンションが、メモに書かれている住所のマンションだよ。」
と、タクシーの運転手さんに言われ、その前でタクシーをおりた。
繁華街からはだいぶ離れているけれど、周りにはコンビニやスーパー、飲食店なども多い。
マンションの1階にもレストランのようなお店が入っているので、食べるものがなくて死ぬことはないだろう。
701号室。
このマンションの7階。
一応、道明寺らしく最上階に住んでいるらしい。
エレベーターに乗り込んで、静寂に包まれると、一気に緊張が増してくる。
こんな所まで来てあたしは何をしたいのだろう。
けど、その答えが出ないまま、エレベーターの扉が開いた。考えたってしょうがない!もう来ちゃったんだから、とにかく風邪を治して帰るだけ。
両手で拳を作って自分に気合を入れる。
そして、701号室の前にきてゆっくりとベルを押した。
何も返事がないまま数秒後、ガチャッと扉が開き、道明寺が顔を出した。
「マジで来た。」
そう言いながら優しく笑う道明寺に、一気に鼓動が激しくなる。
その顔は反則でしょ。
家だから?リラックスしてるから?
いつもより甘えたような顔で笑う道明寺とまともに目を合わせられないあたしは、
「北海道は寒いねー。」
なんて言いながら、タマさんから預かってきた荷物をドンっと道明寺に渡す。
「なんだよ、これ。」
「タマさんから預かってきた。」
「んー。まぁ、とにかく入れよ。」
その言葉を聞いて、照れ隠しのようにわざと
「お邪魔しまーす。」
と大きく言って部屋に入った。
部屋はあたしのマンションよりも少しだけ広いくらい。一人暮らしには充分だけど、道明寺には犬小屋くらいの広さだろう。
殆ど家具もなく、リビングにはテレビとソファとパソコン台くらいでスッキリしている。
キョロキョロと部屋を見回していたあたしに、道明寺が「ここに座れ。」と、手を掴みソファに座らせた。
「熱は?」
「ある。」
「どれくらい?」
「分かんねぇ。」
子供かっ…と小さくツッコミを入れたあと、道明寺の額に触れてみる。
「熱いよっ!」
「だから熱あるって言っただろ。」
「威張ってる場合じゃないでしょ!早く布団に入って寝る!」
今度はあたしが道明寺の手を引いてソファから立ち上がらせる。
そして、隣の部屋のベッドまで連れて行くと、
「まずは薬を飲んで寝ること。」
と、無理やり布団の中へ大きい身体を押し込んだ。
「…牧野。」
「ん?」
「帰るなよ。」
「……分かってる。」
布団から顔だけ出した道明寺にそう答えたあたしは、持ってきた荷物から薬を取り出そうと立ち上がる。
「なぁ、」
「黙って寝る。」
「プッ…来たばっかなのに、話も出来ねぇのかよ。」
また、その顔。
この人は病気になると、甘えたになるのか。
まるで子供のようで不覚にも可愛いと思ってしまう。
「お粥作っておくから、起きたら食べよう。」
「ん。」
「汗かいたら着替えもしようね。」
「ん。」
「とにかく、少し寝て。」
「側にいろ、牧野。」
あたしに向かって手を差し出す道明寺。
それをあたしもゆっくり握りソファに腰掛ける。
あたしの手を握ったままゆっくり目を閉じる道明寺は子供のように素直で、
そんな道明寺を見て、
あたしも今なら素直に、
この人が愛しいと伝えられるかもしれない。
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コメント
こんばんは(#^.^#)
つくしやっと素直になってきたね。
司も病気だと可愛い
起きた時の司とつくしが楽しみです。
朝晩涼しくなってきましたが体調に気を付けてください。
葉月さま〜!
コメント頂いていた分が、今頃になって届きました笑
お返事遅くなりました!
有りか無しか、楽しんで頂けましたでしょうか。
どうぞこれからもよろしくお願い致します♡