有りか無しか 20

有りか無しか

「道明寺が左遷?」

滋さんから聞く話にあたしは驚きを隠せなかった。

生まれた時から道明寺財閥の跡取り息子として育てられ、あまりにも甘やかされすぎた結果、横暴で俺様になってしまったあいつが、今更平社員へと降格し、しかも東京を離れて左遷なんて。

「婚約が破断になったから道明寺が責任を?」

「あたしも詳しいことは分からないのよね。
でも、あきらくんから聞いた話では、司のオフィスに遊びに行った時に、突然書類で内示されたって。
司はそんなに驚いた様子でもなくて、何かお父様と取引したって言ってたみたい。」

「取引?」

「うーん、あたしが思うに、つくしの事じゃないかな。」

取引と言うから、もちろん仕事の事だろうと思っていたのに、滋さんの口からはあたしの名前が出た。

「どういう事?」

「実はね、司の婚約破棄の件で面白い話を聞いたの。」

「面白い話?」

「司には何年も前から付き合ってる女性がいて、どうしてもその人と一緒になりたいから、今回の婚約は破断にしたって噂が広まってるのよ。みんなそれを信じちゃって、なぜか愛を貫くいい男って司の株が上昇中。」

「はぁ?相手に逃げられたから破断になっただけでしょ。」

「事実はね。でもね、この噂が出たのにも根拠があるの。
司が数年前から都心の一等地にあるビルを買い取る為に動いてて、そこの1階にフラワーショップとアレンジメントスクールを作る予定だって話が流れてきたの。」

「え?」

「もちろん司にそんな趣味はないから、付き合ってる女性のためだろうって。」

そんな話は道明寺から聞いたこともない。
それに、結婚は出来ないときっぱりあたしを否定したあいつが、そんなことをするはずがない。

「つくしには何も話してないの?」

「何も知らない。それにっ、それが事実だとしてもあたしはそんな事望んでないし…」

怒りながらそう言うあたしに、滋さんが少し困ったような顔で言う。

「あたしもある意味司とは同じ人種だから分かるのよ。親や家のことを第一で考えなくちゃいけないけど、自分の気持ちも消したくない。八方塞がりになりながらも、自分にできる事は何かって。」

「滋さん…」

「確かに他人から見たら間違ったやり方かもしれない。けど、どちらか片方だけを選ぶって事が出来ないあたし達にとって、間違ったやり方でも、守りたいものや人があるの。司もそうだったんじゃないかな…。」

少しだけ寂しそうにそう話す滋さん。道明寺や滋さんが抱えている重みはあたしの想像以上なのだろう。

でも、次に顔を上げたときの滋さんは、ニコッと笑いながら言う。

「まぁ、真相は司本人に聞いてみないとね〜。」

「道明寺に?」

「そう。
そろそろホームシックになる頃だから優しくしてあげなきゃダメよ。」

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コメント

  1. ゆきたろう より:

    おはようございます♪

    楽しく読ませていただいてます
    滋ちゃん、いいですね~
    同じ環境にいるからこそわかる気持ち
    司くん、感謝しないといけませんね

    ひとつ質問です
    鍵コメはできないのですか?

    • 司一筋 司一筋 より:

      ゆきたろうさん、こんにちは〜。
      コメントありがとうございます!

      鍵コメについて色々調べてみたのですが、
      出来ないようなんです。

      今後、詳しい方に聞いたりして調べてみますので
      もうしばらくこの状態でご不憫おかけしますが
      ご了承ください。

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