「道明寺が左遷?」
滋さんから聞く話にあたしは驚きを隠せなかった。
生まれた時から道明寺財閥の跡取り息子として育てられ、あまりにも甘やかされすぎた結果、横暴で俺様になってしまったあいつが、今更平社員へと降格し、しかも東京を離れて左遷なんて。
「婚約が破断になったから道明寺が責任を?」
「あたしも詳しいことは分からないのよね。
でも、あきらくんから聞いた話では、司のオフィスに遊びに行った時に、突然書類で内示されたって。
司はそんなに驚いた様子でもなくて、何かお父様と取引したって言ってたみたい。」
「取引?」
「うーん、あたしが思うに、つくしの事じゃないかな。」
取引と言うから、もちろん仕事の事だろうと思っていたのに、滋さんの口からはあたしの名前が出た。
「どういう事?」
「実はね、司の婚約破棄の件で面白い話を聞いたの。」
「面白い話?」
「司には何年も前から付き合ってる女性がいて、どうしてもその人と一緒になりたいから、今回の婚約は破断にしたって噂が広まってるのよ。みんなそれを信じちゃって、なぜか愛を貫くいい男って司の株が上昇中。」
「はぁ?相手に逃げられたから破断になっただけでしょ。」
「事実はね。でもね、この噂が出たのにも根拠があるの。
司が数年前から都心の一等地にあるビルを買い取る為に動いてて、そこの1階にフラワーショップとアレンジメントスクールを作る予定だって話が流れてきたの。」
「え?」
「もちろん司にそんな趣味はないから、付き合ってる女性のためだろうって。」
そんな話は道明寺から聞いたこともない。
それに、結婚は出来ないときっぱりあたしを否定したあいつが、そんなことをするはずがない。
「つくしには何も話してないの?」
「何も知らない。それにっ、それが事実だとしてもあたしはそんな事望んでないし…」
怒りながらそう言うあたしに、滋さんが少し困ったような顔で言う。
「あたしもある意味司とは同じ人種だから分かるのよ。親や家のことを第一で考えなくちゃいけないけど、自分の気持ちも消したくない。八方塞がりになりながらも、自分にできる事は何かって。」
「滋さん…」
「確かに他人から見たら間違ったやり方かもしれない。けど、どちらか片方だけを選ぶって事が出来ないあたし達にとって、間違ったやり方でも、守りたいものや人があるの。司もそうだったんじゃないかな…。」
少しだけ寂しそうにそう話す滋さん。道明寺や滋さんが抱えている重みはあたしの想像以上なのだろう。
でも、次に顔を上げたときの滋さんは、ニコッと笑いながら言う。
「まぁ、真相は司本人に聞いてみないとね〜。」
「道明寺に?」
「そう。
そろそろホームシックになる頃だから優しくしてあげなきゃダメよ。」
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コメント
おはようございます♪
楽しく読ませていただいてます
滋ちゃん、いいですね~
同じ環境にいるからこそわかる気持ち
司くん、感謝しないといけませんね
ひとつ質問です
鍵コメはできないのですか?
ゆきたろうさん、こんにちは〜。
コメントありがとうございます!
鍵コメについて色々調べてみたのですが、
出来ないようなんです。
今後、詳しい方に聞いたりして調べてみますので
もうしばらくこの状態でご不憫おかけしますが
ご了承ください。