仕事終わりに街をふらついていると、携帯が鳴った。
「もしもーし。」
「機嫌いいじゃん。」
「そう?仕事が一段落ついたから。」
電話の相手はあたしの『親友』である花沢類。
「牧野、暇ならご飯行こう。」
「ご飯食べちゃったあたし。」
「そっか、じゃあ、」
あっさり電話を切ろうとする花沢類にあたしは慌てて言う。
「ねっ!少し呑まない?」
「お酒?」
「うん。」
「いーけど、」
「じゃあ、決まり!
場所はどこにする?」
花沢類が今どこにいるか分からないあたしは、彼に合わせるつもりで聞いたのに、意外な返事が返ってきた。
「牧野の部屋に行く。」
「へ?うち?」
「うん。俺、お腹空いてるからなんか簡単なものでいいから作ってよ。」
花沢類がうちに来ることは珍しくない。
でも、家呑みするのは初めてだ。
「いーよ。じゃあ、30分後に待ってる。」
「OK」
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冷蔵庫にあった常備おかず、帰る途中で買ったお刺身でカルパッチョ、レンジで簡単に作ったポテトサラダ。
それをパクパク食べながら、花沢類が持ってきてくれたワインで乾杯する。
「このワイン、美味しい!」
「甘いけど、かなりきついから気を付けて。」
お酒を家で呑むなんて久しぶりだ。
道明寺と一緒にいた時は、「呑みすぎるな。」といつも2杯ほどでストップがかけられていたから、こんな風に思う存分呑むなんて学生時代以来かもしれない。
元々、お酒は強い方ではない。
ビールは苦くて呑めないし、日本酒はすぐに頭がクラクラする。
でも、そんなあたし以上にお酒に弱い人が一人。
「まーきの。」
「んー?」
「元気そうで良かったよ。」
「なによー、それ。」
ワインの瓶を2本空けたあたしたちは、だいぶお酒が回ってきて、会話もグダグダだ。
「司のバカヤロー。」
「キャハハー、そうだそうだ道明寺のバカヤロー!」
「牧野を捨てやがってー。」
「そうだそうだー、捨てやがってー!」
こんなに酔っ払ってる花沢類を見るのも初めて。
「まきのー、俺と付き合う?」
「付き合う付き合う。」
「おい、まじめに考えろって。」
「まじめに考えたよー。付き合おう!今から付き合おう!」
あたしもマジの酔っぱらい。
二人顔を見合わせてなぜか大笑い。
「ギャハハハー」
「あははははー」
何に爆笑してるかなんて本人たちも分からないまま、ツボにはいったまま抜け出せない。
花沢類はグラスを持ったまま笑うもんだから、グラスが傾いて着ていたシャツが赤く染まる。
「あーあ、花沢類ワインこぼしてるっ。」
「ありゃー。」
「ありゃーじゃないでしょー。」
「ギャハハハー。」
もう、酔っぱらいがこうなったら手に負えない。
「ちょっと、脱いで。さっと洗ってあげる。ワインの染みが取れなくなるから。」
「いーよ。」
「良くないでしょ。脱いで脱いで!」
花沢類をバンザーイさせて着ていたシャツを脱がせると、洗面所まで急ぐ。
あー、あたしも相当呑んじゃったな。
足がふらついてうまく歩けない。
なんとか赤いシミを最小限にして、リビングに戻ると、ベッドの下に上半身裸の花沢類が眠っていた。
プッ……ベッドまで這っていったけど、直前で力尽きたのか。
時計を見ると午前2時。
5時間近く呑んでいたらしい。
もうあたしも限界だった。
花沢類にブランケットをそっとかけると、
あたしも着ていたパーカーを脱ぎ捨ててベッドに潜り込んだ。
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