有りか無しか 7

有りか無しか

仕事終わりに街をふらついていると、携帯が鳴った。

「もしもーし。」

「機嫌いいじゃん。」

「そう?仕事が一段落ついたから。」

電話の相手はあたしの『親友』である花沢類。

「牧野、暇ならご飯行こう。」

「ご飯食べちゃったあたし。」

「そっか、じゃあ、」

あっさり電話を切ろうとする花沢類にあたしは慌てて言う。

「ねっ!少し呑まない?」

「お酒?」

「うん。」

「いーけど、」

「じゃあ、決まり!
場所はどこにする?」

花沢類が今どこにいるか分からないあたしは、彼に合わせるつもりで聞いたのに、意外な返事が返ってきた。

「牧野の部屋に行く。」

「へ?うち?」

「うん。俺、お腹空いてるからなんか簡単なものでいいから作ってよ。」

花沢類がうちに来ることは珍しくない。
でも、家呑みするのは初めてだ。

「いーよ。じゃあ、30分後に待ってる。」

「OK」




冷蔵庫にあった常備おかず、帰る途中で買ったお刺身でカルパッチョ、レンジで簡単に作ったポテトサラダ。

それをパクパク食べながら、花沢類が持ってきてくれたワインで乾杯する。

「このワイン、美味しい!」

「甘いけど、かなりきついから気を付けて。」

お酒を家で呑むなんて久しぶりだ。
道明寺と一緒にいた時は、「呑みすぎるな。」といつも2杯ほどでストップがかけられていたから、こんな風に思う存分呑むなんて学生時代以来かもしれない。

元々、お酒は強い方ではない。
ビールは苦くて呑めないし、日本酒はすぐに頭がクラクラする。

でも、そんなあたし以上にお酒に弱い人が一人。

「まーきの。」

「んー?」

「元気そうで良かったよ。」

「なによー、それ。」

ワインの瓶を2本空けたあたしたちは、だいぶお酒が回ってきて、会話もグダグダだ。

「司のバカヤロー。」

「キャハハー、そうだそうだ道明寺のバカヤロー!」

「牧野を捨てやがってー。」

「そうだそうだー、捨てやがってー!」

こんなに酔っ払ってる花沢類を見るのも初めて。

「まきのー、俺と付き合う?」

「付き合う付き合う。」

「おい、まじめに考えろって。」

「まじめに考えたよー。付き合おう!今から付き合おう!」

あたしもマジの酔っぱらい。
二人顔を見合わせてなぜか大笑い。

「ギャハハハー」
「あははははー」

何に爆笑してるかなんて本人たちも分からないまま、ツボにはいったまま抜け出せない。

花沢類はグラスを持ったまま笑うもんだから、グラスが傾いて着ていたシャツが赤く染まる。

「あーあ、花沢類ワインこぼしてるっ。」

「ありゃー。」

「ありゃーじゃないでしょー。」

「ギャハハハー。」

もう、酔っぱらいがこうなったら手に負えない。

「ちょっと、脱いで。さっと洗ってあげる。ワインの染みが取れなくなるから。」

「いーよ。」

「良くないでしょ。脱いで脱いで!」

花沢類をバンザーイさせて着ていたシャツを脱がせると、洗面所まで急ぐ。

あー、あたしも相当呑んじゃったな。
足がふらついてうまく歩けない。

なんとか赤いシミを最小限にして、リビングに戻ると、ベッドの下に上半身裸の花沢類が眠っていた。

プッ……ベッドまで這っていったけど、直前で力尽きたのか。

時計を見ると午前2時。
5時間近く呑んでいたらしい。

もうあたしも限界だった。
花沢類にブランケットをそっとかけると、
あたしも着ていたパーカーを脱ぎ捨ててベッドに潜り込んだ。

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