あの日、道明寺に
「ここまでって事だろ。」
と、言われた。
それは、事実上の『別れ』を意味している。
実際、あれから1週間たったけれど、その間1度も道明寺から連絡はなかった。
本当に別れたんだあたしたち。
7年の付き合いだったのに、別れるときは一瞬。
でも、あたしに変な期待を持たせないほど、道明寺の答えは明確だった。
『結婚は考えていない』
結婚が全てじゃないのは分かってる。
でも、あたしにとっての恋愛のゴールは結婚で、パパやママのように家族を作りたいと思うのも本音だから……。
強がってみても、ふとした時に失恋の痛みが襲ってくる。
職業柄、結婚式の打ち合わせで幸せそうなカップルを見ると、少しだけ涙腺が緩む。
そんな時、
「まーきの。」
と、相変わらずのんきな声があたしを現実に引き戻した。
時々、ふらっとあたしのマンションに遊びに来る花沢類。
今日も『美味しいマカロン貰ったから』という理由で30分前に突然やってきた。
「牧野、元気ないけどなんかあった?」
「え?」
「司と喧嘩でもした?」
あたしがいれた紅茶を飲みながら、たいして興味もなさそうに聞く。
「……別れた。」
「誰が?」
「だから、あたしと道明寺。」
「……へぇー。」
あまりの反応の薄さに、こっちが拍子抜けするレベル。
「驚かないの?」
「んー、どーだろ。」
そう言いながら、ポケットから携帯を取り出す花沢類。
そして、黙ったままどこかに電話をかけだした。
「あ、司?」
えっ!この人は道明寺に電話をしたのかっ。
慌てて、声を出さずに花沢類から電話を取り上げようとしたけれど、手足の長いこの人から奪えるはずもない。
「司、牧野と別れたの?
……、ふーん。……じゃあ、切るね。」
どんだけあっさりしてるんだっ。
たった数秒の電話で切ってしまった花沢類。
「ほんとに別れたんだ。」
「だから言ったでしょ。」
「でも、そろそろ牧野から連絡来るかもなって司は言ってたよ。」
「は?…なにそれ。」
「ただ拗ねてるだけって思われてるのかな。」
「ムカつく。」
今までの喧嘩と同類だと思ってるのだろうか。
「理由は?」
「え?」
「別れた理由。」
「あー、言いたくない。」
結婚してくれと迫って、出来ないと断られたからなんて恥ずかしくて死んでも言いたくない。
「司に聞こうか?」
「ダメダメダメダメっ。」
道明寺にまた電話して理由を聞こうとする花沢類。
「じゃあ、教えてよ。」
「はぁー。……だから、簡単に言えば、
あたしたち二人にハッピーエンドはないって事。」
「結婚ってこと?」
いつもはボケーッとしてるくせに、こういう時だけこの人は抜群の鋭さでせめてくる。
「まぁ、そんなとこ。」
仕方なく頷くあたしに、花沢類はクスッと笑いながら言った。
「司はある意味まっすぐ過ぎて嘘がつけないんだろーな。
よく、結婚と恋愛は別だって言うけど、あれをそのまま地で行こうしてるからあいつは。」
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