あたしには付き合って7年にもなる彼氏がいる。
その名は『道明寺司』
財閥の跡取り息子で、道明寺ホールディングスの専務。
高校の時に出会ってから7年、ずっと付き合っているあたしたちは、
そろそろ結婚適齢期を迎えている。
あたしの周りの友達はここ2年ほどで
続々と結婚を決めていった。
しかも、恋愛期間は1年弱。
7年付き合ってるあたしなんて、羨ましさを通り越して、
もう諦めしかない。
でも、今更あいつ以外と付き合うなんて考えられないし、
あたしは道明寺が好き。
このまま結婚しなくても、そういう関係もあり。
そう自分に言い聞かせていたけれど……。
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いつものように週末あたしの部屋で二人で過ごす時間。
何気なくテレビを見ていて、ふとあたしが言った言葉に彼が返した。
「結婚したら夫婦の顔って似てくるって言うけど本当かな。」
「あ?マジかよ。」
「あたしたちも似るのかな。
そしたらどっちに寄せてくるんだろ。」
「おまえに寄ったら最悪だな。」
「ちょっと!それどういう意味っ。」
「クックっ…なんか文句あるか?」
「……ないけど。」
いつものじゃれ合い。
でも、次の道明寺の言葉があたしの胸をチクリと刺した。
「結婚なんかしなくても、ずっと一緒にいる俺らは、もう似てきてるのかもしれねーな。」
結婚なんか。
道明寺が結婚に対してそう思ってるのは薄々感じていた。
けれど、実際言葉にして聞くと胸が痛いし、少しだけ怒りもある。
だから、あたしは思わず聞いていた。
「結婚なんかって…。道明寺は結婚したくないの?」
少し強めに言ったあたしに、道明寺はクスッと笑いながら言う。
「なにおまえ怒ってんの?」
「別に、怒ってないし。」
「怒ってんじゃん。機嫌直せって。」
あたしの頭を撫でる道明寺は、あたしの問いに何も答えていない。
「結婚、道明寺はどう考えてる?」
もう一度まっすぐ聞くあたし。
そんなあたしにこの人は迷いなくきっぱり答えた。
「結婚は考えてない。」
予想していたけれど、予想以上に辛い。
「ど…して?」
「結婚なんて意味ねぇと思ってる。
そういう事に縛られたくねーし。」
「でもっ、7年も付き合ってるのに、」
「実際、おまえと一緒にいて籍を入れてねぇから困ったなんて事なかっただろ。」
困ったこと……確かになかったかもしれない。
たった一つ以外は。
それは、あたしの気持ちが苦しかった事だけ。
「あたしが、結婚したいって言ったら?」
「……。」
「結婚したい。」
初めて口にするその言葉。
まさか、自分から言うなんて想像もしていなかった。
それなのに、道明寺の答えは変わらない。
「おまえとは今の関係でいたい。」
「それは、ずっと?」
「ああ。」
道明寺の迷いない返事に、涙が頬をつたう。
「泣くなって。」
「あたしはあんたと家庭を築きたいって思ってた。
好きだから、好きな人と家族になりたくて、」
「俺にとっての結婚はビジネスだ。」
あたしの言葉を遮るようにして道明寺が言った言葉にあたしは固まる。
「ビジネス?」
「ああ。」
そうか。
そういう事か。
あたしとの結婚はビジネス上メリットなんて何もない。
「じゃあ、なんであたしと7年も付き合ってるのよっ!」
道明寺の胸をドンッと叩く。
「落ち着けって。」
「酷い……。」
「おまえだって結婚に興味なかっただろ。」
「それはっ、」
確かに数年前のあたしはそうだった。
学生時代にフラワーアレンジメントの世界に出会い、それから必死に勉強して今はフリーでアレンジメントを依頼されるまでになれた。
バイトや勉強に明け暮れて、それこそ結婚どころではなかったのだ。
けれど、結婚したくないとは思っていない。
いずれは、その時が来たら……そう思っていた。
「俺はおまえも同じ考えだと思ってた。」
「だから、付き合ってたの?」
「……ああ。」
結婚を望まないあたしだから、道明寺と付き合ってこられたのか。
それなら……、
「あたしが結婚を望んだら?」
あたしのその問いに、今度もきっぱり道明寺は答えた。
「……ここまでって事だろ。」
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コメント
おお〜
皆さ〜ん、ここに不思議な道明寺司が居ますよ〜(笑)
結婚に向かって、グイグイ来ない司君………
またまた、新作ですね♥
楽しみです。
不思議な司くん笑
今後の展開に期待してくださーい♡
はじめまして
えっ~こんな司くんいるの?
ちょっと切ない気がしました。が
これからのお話が楽しみです。
はじめまして〜。
こんな始まりの新作ですが、
我が家の司くんは期待を裏切らない奴
なのでお付き合いお願いしまーす♡