「俺の生涯、愛する女はおまえだけだ。
牧野、俺と結婚してくれ。」
この言葉に嘘はない。
文字通り、俺の生涯で愛した女はこいつだけで、それは今までもこれから先も変わらない。
「この指輪は、俺が初めて自分で働いて金を貰った時に、おまえのために作ったものだ。
いつかおまえにプロポーズするときはこれを渡そうと思ってた。
まさか、5年近くかかるとは思ってなかったけどな。
牧野、手出せ。」
俺のその言葉にゆっくりと手を差し出す牧野。
その薬指に俺は指輪をはめてやる。
そして、もう一度確認するように聞いた。
「牧野、俺と結婚してくれ。」
「……うん。お願いします。」
高校で運命のように出会った俺たちは、幾度も荒波に揉まれ何度も手を離しかけたが、それでも俺にはこいつが最高の女で、いつかこいつと結ばれたいと必死に願ってここまできた。
それが、お互いの最高のタイミングで『結婚』に辿り着けたのは奇跡だろう。
「牧野、」
「ん?」
薬指に光る指輪を嬉しそうに眺める牧野に、
「必ず幸せにする。」
そう言ってやると、答えのかわりに牧野からのチュッと軽いキスという超絶レアなお返し。
俺がそれで満足する訳がなく、主導権はあっさり俺が握り、膝の上に座っていた牧野をソファへと押し倒すと、出張明けの欲求をぶつけるかのように濃厚なキスを繰り返した。
俺的にはこのままベッドへ……と、そういう流れに持っていきてぇ所だけど、相変わらずこの女はそういう流れに乗るはずもなく、深くなる俺のキスに徐々にバタつき始める。
「道明寺っ、」
「なんだよ。」
「ちょっ、……んっ……まだ、話終わってない。」
「あとにしろ。」
牧野の抵抗なんて俺には慣れっこで、それをかわすくらいなんの問題もねぇと思ったその時、俺の背後で声がした。
「お邪魔だったかしら?」
振り向くと、そこには姉ちゃんの姿。
「おっつ、ビビったっ!」
焦る俺に、
「司、あんたはほんと成長してないわね。
高校生の時も嫌がるつくしちゃんを力ずくでベッドに押し倒して泣かせてたでしょ。」
確かに、牧野といい雰囲気になってベッドに押し倒したはいいが、恐くなったこいつが半べそになった所に姉ちゃんが乱入したという苦い記憶が思い出される。
「いい歳した今でも、あんたはつくしちゃんに無理矢理そういうことしてるのかしら?」
さすがに蹴りは入らねぇけど、俺を見る目が恐い姉ちゃん。
「ちげーよ。これは、……合意のもとだ。」
「ほんとかしら?つくしちゃん。」
「えっ、えーと、まぁ、そのぉー……はい。」
「そう。それなら、仕方ないわね。」
どう仕方ないのか、どう納得したのか、よく分かんねぇけど、俺のことを睨むのをやめた姉ちゃんは、逆にご機嫌な口調で言った。
「まぁ、あなたたちの新居だから自由にして頂戴っ。」
その言葉に固まる俺と、なぜか赤い顔の牧野。
「……新居?」
「あら?つくしちゃんから聞いてない?」
「なにがだよ、何も聞いてねぇぞ。」
そう答える俺に、姉ちゃんはさも楽しそうに言った。
「いつでもつくしちゃんがお嫁に来てもいいように、お母様がこの部屋を用意したのよ。
2ヶ月かけて改装した会心の出来よ~。」
にほんブログ村
明日から、新作のショートストーリーをアップしまーす。以前コメントでリクエスト頂いていた内容です。お楽しみに〜
コメント