VOICE〜ボイス 33

VOICE〜ボイス

ロスへの出発の日。
空港まで送ると牧野には言ってある。

ここ数日の牧野は想像以上に可愛かった。
俺もロスに行くと言えば喜んでくれるだろうとは思ったが、俺と離れることにすげー寂しそうに、甘えてくるこいつが無茶苦茶レアで、真実を言わないまま今日まできた。

「浮気しないでね。」
なんて、たぶん一生聞けねぇ台詞だろう。

そして今日、俺の目の前では寮の入り口で鶴と抱きあいながら、
「鶴さんもお元気で。
来年返って来るときは、たくさんお土産持ってきます。」
なんて、鶴と牧野のこの世の別れのような挨拶が続いてる。

そして、それが終わると鶴が俺に
「坊っちゃんもお元気で。」
と頭を下げて言った。

「え?あんたもどっか行くの?」
そう聞く牧野に、

「時間だ。行くぞ。」
俺はそう言って車に乗った。

「……ねー、道明寺。」

「あ?」

「あのさ、なんか変じゃない?」

「……プッ…………、なにがだよ。」

車に乗って20分。
明らかに空港に向かっていないことにやっと気付いた鈍感女。

「いや……空港、こっちじゃないでしょ。」

「そうか?」

「そうかって、ちょっと!
どこ向かってるのよっ。
あんた、まさかこの期に及んで留学やめろとか言わないでしょうねっ。」

さっきまでおとなしく乗ってたのに、気付いたとたんバタバタ暴れるこいつ。

「言わねぇって。
ロスに行くんだろ?
ちゃんと行かせてやるって。」

「なら、どうして、空港に行かないのよ。」

「民間機なんて乗ってられるかっ。
ジェットで行こうぜジェットで。」

邸にジェットを待たせてある。
俺の荷物も積み込み済みだ。
あとは、俺とこいつが乗るだけ。

「…………。」

「牧野?」

「…………。」

「おーい。口開いてるぞ。」

「……道明寺、鶴さんがさっき言ってたけど、
坊っちゃんもお元気で、ってどういう意味?」

まぬけな顔で俺を見つめて聞いてくる牧野。

「そのままだろ。
まぁ、色々補足してやると、
坊っちゃんもロスに1年間行くけどお元気で、
って言いたかったんじゃねーの?」

「…………はぁーーー?!」

運転席とカーテンで仕切られたリムジンのなか、牧野のでけー声が響き渡り、運転手が急ブレーキをかける。

「おまえさ、俺が耐えられると思ったのか?」

「はぁ?なにがよっ。」

「なにがって、決まってんだろ。
俺はおまえと1日でも会わねぇと、
…………死にそうなんだよ。
一人でロスなんてそんな遠くに行かせるかっ。」

もう決めてある。
ロスで暮らす二人の部屋も、牧野を連れて行きたいレストランも、こいつが好きそうなベーカリーも。

そして、こいつと一生共に歩くことも。

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