VOICE〜ボイス 29

VOICE〜ボイス

理事長に呼ばれて、緊張しながら理事長室へと行くと、そこには想像に反して穏やかな表情の理事長がいた。

「そこに座って。」
指し示されたソファに座る。

さっきまで、同じベッドで道明寺と過ごしていたことを考えると、まともに理事長の顔が見れず下を向くあたしに、

「実は、あなたにいい話があるの。」
と理事長が切り出した。

「いい話し……ですか?」

「ええ。
確か去年、留学したいと希望を出していたはずだけど、まだその気はある?」

予想もしていなった話の内容に、絶句するあたし。

「ロスの姉妹校で新学期から新たに留学生を受け入れるの。
あなたが行きたがっていた学校よ。」

ロサンゼルスのその学校は確かにあたしが留学を希望していた英徳の姉妹校。
弁護士、その先は国際弁護士になるのが夢のあたしにとって絶好の環境にあるその学校に、去年留学を希望したが、一足遅く叶わなかった。

「あの頃とあなたの状況も変わっていると思うけど、考えてみるといいわ。」

そう言って意味深に笑う理事長。
変わったことと言えば、
そう……道明寺がいること。
理事長もたぶんその事を言ってるんだと思う。

道明寺が帰ってきた。
もう、どこにもいかない、おまえのそばにいる、
そう昨夜も何度も囁かれた。
あたしがこの話を受ければ、またあたしたちは離れ離れになることになる。

あいつはなんて言うだろう。
ふざけんな……そう言うに決まってる。

「少し……少し考えさせてください。」

あたしはそう言って理事長室を出た。

それから10日、
まだ迷っていて答えがでないあたし。

たった1年間なんだから、行ってこよう、そう思える日もあるけれど、次の日にはやっぱりやめようか、と思っている自分がいる。
でも、考えて考えて結局辿り着く結論は、
『道明寺と離れたくない。』
そこに行くつく。

情けない、あたしらしくない、そう思うけど、
あの離れていた日々を思い出すと、一歩が踏み出せない。

「まだ道明寺さんに言ってないんだ?」
授業の間、ずっと心ここにあらずのあたしに、伊藤くんが言う。

「…………うん。」

「そろそろ理事長にも返事しないとヤバイんじゃない?」

「明後日までって言われてる。」

「そっかぁ。」

「…………。」

黙り混むあたしたち。
今までいつも彼はあたしに的確なアドバイスをしてきてくれた。
そんな彼が今回は何も言わずにただ見守ってくれている。

「ありがとね、伊藤くん。」
何となくそう呟くと、

「つくし、……つくしの夢ってなに?」
と突然伊藤くんが聞いてきた。

「夢?……んー、やっぱり最終的には国際弁護士かな。」

「それって、誰のため?」

「誰のって……」

「いや、ごめん。意地悪な質問したかな。
じゃあ、もっと簡単なやつ。
そもそもつくしが、法学部の授業の他に英文科の講義も受けてることや、英会話サークルに入ってること、留学したいと希望してること、これって、全部……誰のため?」

「…………。」

「つくしが頑張ってるのは俺が一番知ってると思う。その頑張りの理由も知ってるつもりだよ。」

そう言って笑う伊藤くん。

あたしがここまで頑張ってきた理由、それは、

道明寺に釣り合う女性になりたかったから。
世界で活躍するあいつに見合うような女性になりたかったから。

「つくしが迷ってるのは道明寺さんと離れることでしょ?
でも、それってこの先道明寺さんと一緒にいるために必要な時間なんじゃない?」

『この先道明寺と一緒にいるために……。』

そう、あたしの心の根底にいつもそのキーワードがあった。
だから、勉強もバイトも頑張れた。
道明寺を信じれなくなった時でさえ、
いつか道明寺があたしを思い出したとき、立派に生きていることを知ってほしい。
そんな気持ちで自分を励ましてきた。

だから、そう。
道明寺と離れるんじゃない。
道明寺と一緒にいるために、
あたしは今決断する。

「伊藤くん、……ありがと。」

「ん、どういたしまして。」

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