VOICE〜ボイス 28

VOICE〜ボイス
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「道明寺、……あっち向いてよ。」

「やだ。」

「………それなら、少し離れて。」

「無理。」

昨夜、あたしたちは……外泊した。
道明寺と一緒に一夜を過ごすことに、緊張と嬉しさと、その他もろもろの理由で
なかなか寝かせて貰えなかったあたし。

目が覚めたのは10時を過ぎていた。
そして、翌朝、通勤客のピークを過ぎた電車に揺られ寮に帰る途中、隣に座る道明寺の視線がこれでもかと言うくらい熱い。

それだけじゃなく、あたしの右手を握る道明寺の手の動きが……やらしい。
「道明寺っ、……やめて。」

「あ?……プッ……なにがだよ。」

「なんかっ、だからっ……
…………いや、何でもないっ。」

言葉にするのも恥ずかしくて黙るあたしに、

「めちゃくちゃ可愛い。」
とこの人は甘い声で言う。

今までも二人きりになると甘い顔をする道明寺が、昨日一線を越えてから、ますます甘い。
それがあたしを困らせる。
なんとかその雰囲気を変えるため、気になっていたことを聞いてみる。

「道明寺、あたしずっと気になってたんだけと、あんた鶴さんとどんな話したの?
外泊届けがどうの……って。」

「ああ、この間俺とおまえの外泊届けを書いて鶴に預けといた。
いつでも電話一本で出せるように。」

「へぇー……って、ちょっとっ!
なに勝手にあたしのまで書いてんのよっ。」

「プッ……だって、俺が外泊するときはおまえも一緒だろーが。
な?書いておいてよかっただろ?
こんなに早く使う日が来るとは思わなかったけどな。」

「……ん、……まぁ、……そうだけど。」

そうだけど、……そうなんだけど……、
鶴さんにどんな顔で会えばいいのよ。
道明寺と泊まってきましたって、平気な顔で素通り出来るほど図太くない。

そんなあたしにこの人はとんでもないことを言う。

「牧野、寮出ねーか。」

「……え?」
電車のなかで大きな声で聞き返すあたし。

「寮じゃなければ、もっと自由に出来るだろ。」

「自由に……って。」

「門限もないし、好きなときにおまえに会いに行ける。」

「…………。」

「なぁ、一緒に部屋でも借りるか?
それとも、おまえが邸に来てもいい。
どうせ、いずれ結婚すんだから問題ねーだろ。」

あたしの手をギュット握って、甘い顔でそんなことを言う道明寺。
あたしは、なんて言い返せばいいのか分からず、
「次、降りるよ。」
と立ち上がった。

ペナルティー2回目のあたしたちは、あと1回で停学。
今回は鶴さんのおかげでなんとか免れたけど…………、

その日の夜、部屋の電話が鳴った。

「もしもし。」

「牧野さん、私です。」

「理事長っ。」

電話の相手は道明寺のお母さん。

「少し話があるの、今から理事長室に来れるかしら。」

完全に…………バレた。
いくら鶴さんを味方に付けても、理事長には敵わない。

「……はい。わかりました。」

あたし……停学になるんだ。
パパとママになんて説明しよう。

そんなことを考えながら部屋を出た。

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