ジャー……
室内に水音が響き渡る。
「先に入ってるから、あとで来て。」
あたしは道明寺にそう言って逃げるようにバスルームに入った。
大きな鏡の前でペタンと座り込む。
あたしがお願いして、こんなホテルに来た。
部屋も恥ずかしいからと出来るだけ暗くしてもらった。
お風呂のお湯も道明寺が用意してくれた。
あたし、…………わがままばっかり。
道明寺、…………こんなあたしで嫌にならないのかな。
「牧野、入ったか?」
扉の向こうから道明寺の声で、はっと我に帰る。
「ごめんっ今入るから、……5分したら……来て。」
そう言って慌ててボタンに手をかけた。
……ちゃぽん…………。
お湯に浸かって5分後、扉に背中を向けて見ないようにしてるあたしの後ろで、道明寺がお湯に体を入れた。
二人で入っても充分な広さの浴槽。
背中を向けてるあたしの腕を道明寺が掴み、
「牧野、こっち来い。」
と引き寄せる。
微振動のジャグジーのおかげで、泡があたしの体を隠してくれて恥ずかしさは軽減されたけど、
素肌に当たる道明寺の温もりが体を熱くさせる。
どこに目線を合わせていいのか分からず下ばかり向いていると、
いきなり道明寺があたしの腰に手を当てて軽く持ち上げ、あたしの両足を割り、道明寺と向かい合うような形で道明寺の太ももの上に乗せた。
一緒にお風呂に入るのさえはじめてなのに、足を開いて道明寺にまたがるようにして座らせられているこの体勢は恥ずかしすぎる。
「道明寺っ。」
「だって、おまえ下ばっかり向いてて顔見せてくれねぇから。」
そう言う道明寺は拗ねてて少し可愛い。
「牧野、」
「……ん?」
「キスして。」
道明寺の可愛いおねだりにチュッと軽くキスをする。
「もっと。」
チュッ…………。
「もっと、エロいやつ。」
普段見せない甘えてくる姿にキュンとして、バカみたいにおねだりに答えてあげると、
道明寺の手があたしの体を這いはじめる。
あたしが仕掛けたキスよりも何倍も『エロい』キスを返してくる道明寺は、凹凸のない幼稚なあたしの体を、
「すげー綺麗。」
と呟きながら、甘い顔で見つめてくる。
そんな道明寺を見て思う。
綺麗なのは……あんた。
水に濡れたストレートの髪は、普段の道明寺よりも一段とシャープさを増し、綺麗な顔をますます強調してる。
胸まで見える体は、どこも引き締まっていて、これ以上鍛える必要がないくらい。
どこにいても圧倒的な存在感とオーラで人を引き付けるあんたが、どうしてあたしなんかと。
そう思った瞬間、その答えを言うかのように、
道明寺があたしを見て言った。
「ずっとおまえとこうしたかった。
夢にまで見た。
俺は、おまえとしか考えらんねーから。」
その言葉に、ジワッとあたしの涙腺が崩壊していく。
「牧野っ、おいっ。
泣くなって。…………嫌だったか?
おまえが無理ならこれ以上はしねーから。」
そう言って体を這ってた手をあたしの両頬に添える。
バカ。ほんとバカなんだから。
いつだって、柄にもなく、あたしのワガママばっかり優先させて。
「違う……違うからっ。
嫌なんかじゃないっ。
道明寺、あたし……、あたしも道明寺じゃなきゃ考えられないからっ。
だから……大丈夫。
道明寺の……好きにして。」
自分で口にしてみると、今までガチガチだった体から不思議なくらい力が抜けていく。
向かい合う道明寺の首に腕を回し、あたしは彼からの深く長いキスを受け止めた。
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