VOICE〜ボイス 25

VOICE〜ボイス

ラブホテル……
こいつはそこがどういうところなのか絶対分かってない。
そりゃあ、何をするところかは知ってるだろうけど、シーツが汚れるからという理由だけで行くには、今のこいつにはレベルが高すぎる。

「マジでそこがいいのか?」

「うん。」

「マジか?」

「マジで。」

端からみたらバカみたいな会話に聞こえるが、本人たちにとっては至って真剣。
俺にとっては付き合って四年越しの念願が叶う一大事。

「分かった。あとで後悔するなよ。」
俺はそう言って牧野の手を掴み歩き出した。

ラブホテルといっても、昔からある明らかにそういうビジュアルのものと、外観からはラブホテルとは見えないほどスタイリッシュなものまで最近はある。
俺はそのなかでも一番高級なホテルの奥まった入り口に牧野を連れて入った。

部屋に入ると、第一声目に
「ここって、ラブホテル?」
と聞く牧野。

「ああ。」

「なんか……イメージと違う。」

「おまえのイメージってどんなんだよ。」
俺はそう言いながら部屋のソファに牧野を引っ張っていき並んで座る。

「なんかこう、薄暗い部屋に赤とかピンクのライトがクルクルしてて、」

「おう、そういうのも出来るぞ。」
俺はベッドの上にあるレバーを回し部屋を暗くしてその横のスイッチをいくつか押すと部屋が一気に牧野の言うそれらしくなる。

「それから?」

「えっ、……それから、えーと、ベッドもフワフワっていうか、プカプカっていうか、ウォーターベッドみたいな?」

「ん、試してみるか?」
そう言って俺は牧野を横抱きにしてベッドに放り投げてやる。

「ワァーっ、ちょっとっ!…………えっ、プカプカだぁー。」

「だろ?それから?」
ベッドに横たわる牧野の横に俺も寝転んで聞いてやる。

「それから……お風呂!お風呂もジャグジーが付いてて、泡々なお湯ができて、ガラス張りみたいな?
…………いや、まさかっ、」

「もちろん、ここもガラス張りだ。」
ベッドに置かれたリモコンをピッと押すと、目の前の壁にかけられたカーテンが開かれ、ガラス張りの浴室が見える。

「なぁ?おまえの希望通り、ラブホテルだろ?
せっかくだから全部試そうぜ。」

こいつはここがどういうところなのか絶対分かってない。
ラブホテルなんて、男の欲望だらけの世界だ。

ゆっくりと牧野の唇を舐めあげながら、聞いてやる。

「選択肢はふたつ。
一人でシャワーに入ってるところをガラスの向こうから俺に見られるか、
それとも、俺と一緒に入るか。
俺はどっちでもかまわねーよ。」
どちらにしても牧野には高レベル。

「っ!ヤダヤダ……どっちも無理っ。」
そう首をふる牧野に、

「ここまで来て逃げるのかよ。」
と意地悪な質問を投げかける。

案の定、こいつは想像通りの答え。
「…………逃げないもん。」

牧野の潤んだ目がすげー綺麗で可愛くて、これが俺のものなんだと思うとゾクゾクして。
耐えきれなくなって覆い被さるようにキスをする。

いつも必死に抑えてる欲望を、今日は解放してもいいんだと思うと、唇も手も牧野を求めて止まらない。

くちゅ……んっ……くちゅ……はぁ……
ブラウスのボタンを上からふたつ外し、牧野の開いた胸元に唇を這わす。
柔らけぇ。
堪らずに裾から手を滑り込ませ、背中の金具を外してやり、そのまま手を前へと移動させる。
細い体なのに、膨らみは想像以上に柔かくて、
もっとそこを揉みしだいて、吸い付きたい。

と、その時、牧野が消えそうな声で言った。

「こういう所、来たことあるの?」

「あ?」

「だって、道明寺詳しいから。」

不安そうな目で俺を見つめる牧野。確かに誤解されるのはしょうがない。

「ここの経営者は、実は○○ホテルのオーナーだ。」

○○ホテルといえば、若いセレブ層に人気の高級ホテル。同業者のオーナーから、今度スタイリッシュなラブホテルを手掛けると聞いたときは驚いたが、その戦略は見事にヒットし、ホテル部門の業績はかなり好調らしい。

「昔からの知り合いで、ここが完成したときにはF4で内覧に来たんだよ。まさか、自分で使うとは思わなかったけどよ。」

そう言うと、俺は着ているシャツを脱ぎ捨て、牧野のブラウスの残りのボタンに手をかけた。
「道明寺……シャワー。」

「あとでな。……くちゅ……」

「んっ……今がいい。」

俺の唾液で唇を光らせてそう訴えるこいつに、耳元で
「一緒に入ろうぜ。」
そう言うと、

すげー考えたあと、

牧野がコクンと小さく頷いた。

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