牧野からのヤキモチ。
それだけでもすげーヤバイのに、こいつからキスしてくるなんて……。
人通りの多い、駅近くのビルの影に隠れて、何度も何度も貪るように牧野の唇に食いつく。
「……んっ……どう……みょうじ……」
俺を止めようとする牧野の声さえも甘い。
それに誘われて、体も正直に反応していく。
「牧野……なぁ、……このままどっか行こうぜ。」
「……えっ?」
「このまま帰るなんてあり得ねぇだろ。」
そう言いながら、我慢していた手をそっと牧野の胸にすべらせる。
「どっ、道明寺っ。……ダメ……。
誰かに見られるっ。」
「だから、見られねぇところに行こうぜ。」
強引なのは分かってる。
自分勝手なのも分かってる。
けど、この状況で離してやれるほど出来た男じゃねぇ。
「門限……延長届け出してきたけど、あと一時間もないし……。」
潤んだ目で俺を見上げてそう言う牧野に、
「それがクリアになれば、俺とこのまま過ごすか?」
そう聞いてやる。
少し迷ってた牧野が小さな声で呟く。
「……あたしだって、……そうしたいけど。」
牧野のその言葉を聞いて、俺はポケットから携帯を取りだし、個人的に仕入れた番号にかける。
「鶴か?俺だ。
この間書いた外泊届け、今日の日付で俺と牧野の分、出しておいてくれ。
……ああ…………頼む。」
「ちょっと、道明寺っ、どういうこと?」
俺の電話の会話を聞いて焦る牧野。
そんなこいつに言ってやる。
「門限はこれでクリア。
他に俺と過ごしたくねぇ理由があるなら聞いてやる。」
一応、逃げ道は作ってやる。
このどうしようもなく愛しい女が、まだ無理だと言うなら待ってやる。
俺はおまえしか考えらんねーから。
そんな気持ちで見つめる俺に、
牧野は俺の好きな凛とした目で言った。
「あたしは…………、
あんたと過ごしたいと思う理由ならいっぱいあるけど、過ごしたくない理由なんて、
一つもない。」
これだからこいつには敵わない。
土壇場になると、逃げるどころか俺を飲み込む勢いのこいつ。
「でも…………邸とか、メープルとかそういうところはイヤ。」
うつむいてそう言う牧野に、
メープルに行こうとしてた俺は
「あ?なんでだよ。」
と聞き返す。
「だって…………、」
「だって?」
「だから、……」
「だから?…………牧野?」
うつむいたままの牧野は、俺からは頭のグリグリしか見えなくて、どんな顔をしてんのか分からない。
「牧野……ちゃんと言えよ。」
「だから、ね、あのさ、
あたし初めてだから、そのぉ、シーツとか汚しちゃったら困るから、
だから、知ってる場所はイヤなの。
出来れば、そのぉ、……そこら辺の裏通りにあるホテルでお願いします!」
昔からこいつの考えてることや言ってることが、理解できなくて、あきらたちにも
「俺らも牧野の言動は理解できねーよ。
頑張れよ、司。」
と慰められてきたけど、
さすがに、今回は今までの比じゃねぇ。

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