VOICE〜ボイス 21

VOICE〜ボイス

牧野と晴れて恋人関係が復活したはずなのに、俺の気持ちはモヤモヤMAX。

原因はというと……、

「伊藤くん、そろそろ時間じゃない?」

「あーほんとだ。行くか。」

「うん。道明寺、またね。」

このどこから見ても恋人同士のような会話を繰り広げてる、俺の彼女と『伊藤くん』。

NYでの誤解が解けて、俺の部屋でいい雰囲気になって、あいつらに邪魔はされたけど、すぐにそんなのは挽回できるくらいラブラブな関係になると思ってたはずなのに、あれから2週間たった今も俺たちの関係に進展はなし。

それどころか、こいつの生活にはこの『伊藤くん』がかなりの割合、時間を食っている。
その不満を牧野にぶつけると、

「学部も、受けてる教科も、ゼミも、サークルも同じなんだから仕方ないでしょ。
それに、伊藤くんとはあんたが怪しむような関係じゃないしっ。」
と逆ギレされる始末。

それに、いつもなら
「司~、牧野取られるかもしれねーぞ。」
と、からかってくるお祭りコンビでさえ、

「伊藤は無害だから大丈夫だ。」
と笑ってやがる。

確かに人畜無害そうな顔をしてやがるけど、それなりにいい男だし、家柄も悪くねぇ。
それになんといっても、あいつも男だっ。
牧野がなんとも思ってなくても、あいつが牧野を好きだとしたら黙っておけねぇ。

そんな俺の心配もよそに、牧野は平然と言ってのける。
「明日、門限の延長届け出してるから。」

「あ?何でだよ。」

「英会話サークルの集まりがあって遅くなるから。」

「聞いてねーぞ。」

「言ってないし。」

最近は遅くまで会社でババァの手伝いをさせられてる俺は、寝るまでの少しの時間をこうして牧野と共有スペースで会うことだけが唯一の楽しみ。

「この時間にも帰ってねーのかよ。」

「…………たぶん。」

「ダメだ。」

「はぁ?なにがよ。」

「行くなって言ってんだよ。」

「…………。」
無言で睨み付けてくるこいつ。

「こんな遅くに女が一人でウロウロするな。」

「だからっ、サークルの人も一緒なんだって。」

「でも、寮までの道はおまえ一人だろ。」
そう言った俺に、牧野はフフンと鼻で笑い、

「伊藤くんがいるもんねー。」
と言いやがった。

またかよっ。
また『伊藤くん』かよ。
確実に俺よりも一緒にいる時間が長いだろうし、牧野があいつになぜか警戒心がゼロなのも気に食わねぇ。

「絶対ダメだ。
あいつがいるなら尚更ダメだっ!」

「なんでよっ。道明寺に反対されても行くから。」

「おまえ、俺の言うこと聞けねぇのかよ。
どうせ、サークルの集まりって言ったって、合コンのようなもんだろ?
しかも酒が入ったらどんな騒ぎになるかわかんねーだろ。
俺様というかっこいい彼氏がいるおまえには行く必要はない。」

「合コンって……そんなわけないでしょ。
サークルのみんなでただ親睦を深めるだけ。」

「その親睦を深めるっつーのが怪しいんだよっ。おまえは俺とだけ親睦を深めればよしっ!」

「……ありえないっつーの。」

行く、行くな、の攻防戦はそのまま続き、結局別れ際になっても言うことを聞かねぇこいつに、痺れを切らした俺は、
「どうしても行くっつーなら俺も参加する。」
と、言ってやると、

少しだけ間があった後、
「ダメっ!絶対ダメっ!
道明寺は絶対来ちゃダメだからねっ!」
と、すごい焦って言いやがる。

その焦り顔に無性に腹が立ち、
俺は決めた。

絶対行ってやる!

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