突然乱入してきたいつものメンバーによって、道明寺の部屋は一気にお祭り騒ぎになった。
「つくし、今日はあたしたちもここに泊まるから~。」
「えっ、はぁ。」
「ふざけんなっ、俺の許可を得てから言えっ!」
「さぁ、まずはお泊まりグッズに着替えようっ」
「あきら、グラス出して。」
「全部で何人?」
「俺とおまえと、類だろ、それと滋、桜子、牧野、6人か?」
「なんか足りなくねぇ?」
「……あっ、司のこと忘れてた。」
「テメェら、殺すぞ。」
「ギャハハハーー」
道明寺の眉間の青筋がどんどん深くなるのもお構いなしに、『お泊まりパーティー』の用意は進んでいく。
あたしは……というと、なぜかお着替え中。
隣の部屋で滋さんが持ってきたパジャマに着替えさせられてるところ。
「滋さん、これどーしたんですか?」
桜子と滋さんに着ていたTシャツを脱がされながら聞くあたしに、
「ここに来る途中、お泊まり用に買ったのよ。」
と嬉しそうに話す滋さん。
「先輩、滋さんお泊まり会、はじめてなんですって。」
「そうなの?……って、……自分で着れるからっ……。」
「桜子だって初めてって言ってたじゃん。」
「まぁ、そうですけど。」
「へぇーなんか意外だな。二人とも小さい時、友達とお泊まり会しなかったの?」
「したけど、いつも温泉とか貸し切りコテージとかそういうので、誰かの家にって言うのはなかったなぁ。」
「あたしもです。」
聞いたあたしがバカだった。
この人たちとは次元が違うことをすっかり忘れてた。
「それにしても、相変わらず下着だけはお金かけてますよね先輩。」
「ちょっとっ、勝手に脱がせないでよっ。
自分で出来るから。」
「ほんと~今日はかわいいピンクですかぁ~。」
「滋さんっ、目がやらしいです。」
ドタバタでやっと着替えたあたしたち。
ウキウキの滋さんと、どんな服装でも相変わらず綺麗すぎる桜子と、こんな女の子らしいパジャマなんて着たことないあたし。
「さぁ!飲むぞぉ~」
滋さんの掛け声で揃って隣の部屋へ移動する。
せっかく牧野と甘い時間を過ごせると思った矢先、いつものこいつらの登場。
たぶん、こいつらが来なかったら…………
そう思うと、やべぇ、体が反応する。
「お待たせ~~~。」
そんな俺の良からぬ思考をぶったぎるのは、相変わらず滋のバカ。
声のする方を振り向くと、3人お揃いのパジャマ姿で立っている。
よくみると、色も柄も同じなのに、少しずつデザインが違っていて牧野のは他の二人よりも露出が高い。
「牧野、かわいいじゃん。」
「テメェ、俺より先に誉めてんじゃねーよ、類っ。」
「じゃあ、司も言えば?」
「っ、…………か、かわ……」
「さぁ、用意出来たぞー、乾杯だ。」
こいつらは人の家だということを全く忘れてる。
俺の部屋のバカ高いソファにふんぞり返って、バカ高いグラスで何度も乾杯~を繰り返し、バカ高いワインを次々と空けていく。
牧野にチラリと視線を移すと、滋に隣をがっちりキープされて、ほろ酔いなのか頬を赤く染めて楽しそうにしてやがる。
俺はそんな牧野を見て、奥のクローゼットまで行くと、体のちいせぇ牧野にちょうどよさそうなパーカーとブランケットを持って戻る。
部屋に戻ると、俺の手にあるブランケットを見て
総二郎が
「司、寒いのかよ。」
と、聞いてくるが俺はそれを無視して、牧野のそばに行くと、膝にブランケットをかけてやり、パーカーを渡しながら言ってやる。
「着てろ。」
「…………ん。」
パジャマの広めの襟から、チラチラと見えている。
俺がさっき外したピンクのブラジャーが。
「司~、滋ちゃんにはないのー?」
「ねーよ。」
「なんでよっ。あたしも寒いんですけど。」
「あきら、おまえの上着かしてやれ。」
「俺かよっ。」
「そーいうことじゃなくて、あたしが言いたいのは、女の子には平等に優しくしなさいって言ってるの。」
まだ始まって30分だというのに、もう酔って舌足らずな口調の滋。
「女の子には優しくしなさい。」
口を尖らせて俺にそう言う滋に、はっきりといってやる。
「俺が女だと思ってるのは牧野だけだ。
だから、優しくするのも牧野だけ、特別扱いするのも牧野だけ。」
ヒューー。
総二郎が口を鳴らす。
「その代わり、おまえや桜子にはあきらと総二郎が優しくしてやるから心配するな。
こいつらは女に対してはプロだからな。」
「ゲェーー。」
滋の女らしくねぇうめき声にその場は爆笑に包まれる。
『特別な女。』
今まで2年間、言えなかったこの言葉を、
はっきりと口に出して言えることがどれだけ幸せなことなのか。
だから俺は言う。
これからはどんな場所でも、誰といても、どんな状況でも、
躊躇なく、言う。
『牧野は俺にとって特別な女だ。』

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