「mint」
まるでその言葉が、あたしたちのこの2年間を解き開く鍵のように、画面が切り変わった。
道明寺があたしの後ろからマウスを動かして、カチッとクリック音とともに表れたのは、
2年前からほぼ毎日更新されている日記のような文章。
たった1文の日もあるし、何行にも長く書かれている日もある。
それは道明寺が電話でよそよそしくなって何か態度がおかしくなった頃から始まっていた。
『ごめんな。』
そんな言葉から始まって、読み進めていくと、この2年間で道明寺が苦しんできた事柄が克明に書かれていた。
それを読みながら、あたしは何かの小説を読まされているような気がする一方、でもこれが現実に道明寺の身に降り注ぎ、そしてあたしにまで魔の手が来ていたなんて、信じられない気持ちで
いっぱいになった。
最初の半年分ほどを夢中で読んだあたしに、
「その辺で事情は分かっただろ?」
そう声をかける道明寺。
後ろであたしを見守っていた道明寺にあたしは振り向きながら、
「まだ全部読んでない。」
と言う。
「あとは……まぁ、たいした事書いてねーし、ほとんど同じような内容だから。」
そう言って照れ臭そうにする道明寺が気になって、あたしはカチッと次のページをクリックする。
カチッ……カチッ……カチッ……。
次のページ、次のページ、次の、次の
「牧野、もういーだろ。」
カチッ……カチッ……カチッ……。
「同じだっつーの。ハズイからやめろ。」
次へ次へ読み進めるあたしに、道明寺が後ろから手を伸ばしてきて、マウスの上にあるあたしの手の上に自分の手を乗せた。
「マジで、あとは全部同じだから読まなくてもいい。」
あたしの耳元でそう話す道明寺。
それがまるで電話越しに聞く道明寺の声のように聞こえ、いつもいつも聞きたくて堪らなかった苦しい日々を思い出す。
「道明寺…………ごめんね。
ほんと、……あたし……バカだから、道明寺が言ってたこのサイトのことも……すっかり忘れて……ごめんね。……ほんとごめんね。」
自分のバカさ加減を棚にあげて、道明寺ばかり責めてきたあたし。
そんな自分に呆れ、悔しくて、そして、道明寺の強い想いに涙が溢れてくる。
「バカっ、泣くなって。」
後ろからあたしをギュッと抱きしめてくれる。
「道明寺。」
「ん?」
「……言葉で言って欲しい。」
「…………。」
あたしの言った意味が分かったのか、道明寺はイスに座るあたしをクルリと後ろに向かせ、床に立ち膝を付いている道明寺と向き合うようにした。
顔の高さはちょうど同じ。
あたしの目を見て道明寺が言う。
「牧野、おまえに会いたい。
いつもおまえのこと考えてる。
おまえに会って、抱きしめて、キスして、
おまえに触りたい。
牧野、……愛してる。」
それは、ほぼ毎日道明寺があたしに送ったメッセージに何度も書かれていた言葉。
「道明寺、……あたしも。」
「ちゃんと言えよ。」
「あたしも、……愛してる。」
お互い引き寄せられるように重なる唇。
いつもの、恥ずかしいとか、どうしようとか、そんな雑念は不思議なくらい浮かばなくて、
全身で道明寺を受け入れてるあたし。
それが伝わったのか、道明寺のキスがどんどん深く激しく、いや、なんかやらしくなってきた。
「……んっ……はぁ……。」
必死に答えようとするけど、もういっぱいいっぱいで。
「道明寺っ……んっ……。」
そんなあたしを更に追い詰めるように、道明寺はあたしの体をイスから床に引き下ろして、耳や首筋にまでキスを落とす。
誰かにそんなところを触られるのも、ましてキスされるのなんて初めてで、どうしたらいいのか分からないけど、…………嫌じゃない。
道明寺になら、何されてもかまわない。
そう思うと、自然と体から力が抜けてきて、大胆にも道明寺の首に腕を回すあたし。
そんなあたしを道明寺は真っ正面から見つめて、
「おまえにそんなことされたら抑えらんねぇぞ。」
と呟いて熱っぽい男の目で見つめてくる。
それが何を意味してるのか考えると一気に熱が上がるけど、
「触っていいか?」
その問いに、コクンと頷いたあたし。
体をその場に寝かされて、道明寺の手があたしの薄いTシャツの中に入ってくる。
床にはフカフカの絨毯が敷き詰められていて、素肌で触れても気持ちがいいくらい。
ブラジャーの上から触れてきた手は、すぐに邪魔だと言いたげに肩紐を引き下ろして膨らみを露にしていく。
あたしの首筋に埋められた道明寺の顔から、興奮した吐息が漏れてきて、それを聞くだけであたしまで変になってくる。
器用に金具を外したブラジャーを引き上げて、大きな手で優しく愛撫されていく二つの膨らみは、自分でも気付かないうちに先端が硬く立ち上がり、それを道明寺が執拗に刺激すると、
「んっ……やぁ……っ……」
と、恥ずかしいほどの甘い声が出る。
そんなあたしに、道明寺は
「すげーかわいい。」
と更に甘い言葉で攻めてきて、
「見せて。」
と、かろうじて薄いTシャツで隠されていた膨らみを露にしようと、シャツをめくろうとした
その時、
ドンドン、ドンドン。
と部屋をノックする音。
あたしは咄嗟に道明寺の胸にしがみつく。
そんなあたしを抱きしめて、
「大丈夫だ。見てくる。」
そう言って立ち上がった道明寺が部屋の入り口までいき、ドアを開けた瞬間、
「司~。」
「つくし~。」
「俺らもタマさんの見舞いに来たぞー。」
「外泊届け出してきてるらしいじゃん。
朝まで飲もうぜぇ~。」
「あたしらが二人を仲直りさせてあげるから、ねっ、司、安心しなっ。」
「道明寺さん、お邪魔します。」
扉の向こうには見なくても分かる。
いつものメンバー。
「てめぇーらっ!帰れっ!」
「あれ?つくしは?」
「もしかしてまた喧嘩したのか司。」
みんなには床に座るあたしがデスクの影になっていて見えないらしい。
その隙に、外されたブラジャーを急いでつける。
「とにかく、今日は朝までコース!」
「題して、司と牧野のよりを戻そう会議!」
「朝まで生討論だなっ!」
「ギャハハハーっ、」
「そんで、牧野はどこいった?」
「勝手に入るな、類っ!」
この状況で出ていけるかっ、そう思って体を縮こませたあたしの頭上で、
「牧野、見ーけっ!」
そう楽しそうに呟く花沢類の姿。
はぁーーー。
仕方なく立ち上がるあたしは、部屋の入り口で頭をわしゃわしゃ掻き回してる道明寺と目があって、さっきまでのあたしはどこにいった?と思うほど恥ずかしくて……死にたくなった。
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