VOICE〜ボイス 11

VOICE〜ボイス

情けない、情けない、情けない。
情けなくて…………涙が出る。

理事長室に呼び出されて、昨夜の説教を受けて、
その流れで、……言わなくてもいいことまで言った。
あんなことを言ったら、あたしがまだあいつに未練があるみたいに聞こえただろう。

女子寮まで早歩きで進み、自室に入ったとたん、
両目から涙がポトリと床に落ちた。
さっきまでここに道明寺がいた。

終わらせたはずの恋なのに、あたしの気持ちとは裏腹にまた動き始めてる。
どんなに拒んでも、どんなに見て見ぬふりをしても、情けないほど……惹かれてる。

どうしてあたしはあいつがいいんだろう。
どうしてあたしは道明寺じゃなきゃダメなんだろう。
いつまでこんな風に苦しむんだろう。

そう思うと、情けなくて涙が出る。

プルルルルル……
部屋の電話がなる。

「……もしもし。」

「牧野、俺だ。」

「…………。」

「会って話そうぜ。」

「…………。」

「牧野。」

「………」

「牧野?……泣いてるのか?」

「…………グスッ。」

「…………泣くなって。俺が悪かった。
あんな罰則知らなかったんだよ。
それに、ババァは俺が悪いと思ってるから心配すんな。」

あたしが泣いてる理由をバカみたいに勘違いしてる道明寺。

「なぁ、牧野。
俺さ、すげーいいこと思い付いたんだけど。」

「……なによ。」

「おっ、やっと口開いたな。」

「…………。」

「門限が7時だったよな?どんな理由も認めませんって言ってたよな?
ってことは、俺も7時にはここに帰ってこれるってことだろ?
10時までは男子寮と女子寮も行き来していいはずだから、少なくとも3時間はおまえと一緒にいられる。」

「はぁ?」

あまりに突拍子もないことを、すごく嬉しそうに言うこいつ。

「夜、俺の部屋に来い。」

「やだ。」

「おまえに話があんだよ。」

「あたしはない。」

「うるせーって、来いったら来い。」

「行かないって。」

そんなやり取りのあと、急に道明寺が固い声で言った。

「牧野、おまえが知りたいこと全部話す。」

あたしが知りたいこと…………、
それは、聞きたいけど聞きたくない。
知りたいけど知りたくない。
そう思うと、またじわっと目に涙がたまるのがわかった。

それから4日。
道明寺の考えは……甘かった。

7時に寮に帰ってこれるのはその通りだったけど、仕事は寮でも出来ると判断されたらしく、西田さんを伴って連日遅くまで働いているらしい。

あたしもあたしで、ゼミの課題や英会話サークルの集まりで前から予定が入っていたものを、すべてあたしに合わせて寮のあたしの部屋でやってもらうことになり、結局あれから一度も道明寺とは会っていない。

罰則5日目、校内を歩いていると、後ろからあの人の声。

「まーきの。」

「花沢類っ。」

「聞いたよ。寮のルール破って暴走したんだって?」

「ちょっと!なんかその言い方……。」

「間違ってる?」

「間違ってないけど……あいつのせいだし。」

「相変わらず司はやりたい放題だね。
牧野そんなんじゃ禿げちゃうよ。」

「あたしもそう思う。
道明寺と一緒にいたら病気になるかもね。」

冗談で言ったその言葉に花沢類がなぜか痛い顔をする。

「牧野、司が昨日倒れた。」

「……え?」

「昨日の昼、大学から会社に移動するとき、倒れたらしい。
俺も夜になってあきらから聞いたんだ。
病院で点滴して夜には寮に戻ったらしいけど……」

あたしは、花沢類の言葉を最後まで聞かずに走り出していた。

バカっ、バカっ、バカっ。
どうして、なんで、……

寮まで超特急で走り抜け、そのままの勢いで男子寮までかけていく。
ふと、気付いてまた入り口まで戻る。

「鶴さんっ、道明寺の部屋って何号室?」

「最上階の501だよ。」

「ありがとっ!」

待ってなさいよ、バカ道明寺っ!

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