VOICE〜ボイス 8

VOICE〜ボイス

「おまえのこと考えてた。」

そんなことを言いながら、あたしの隣に座る道明寺。

「こんな時間にどうした?」

「道明寺こそ、こんな時間に何してるの?」

「俺は今帰ってきたとこだ。」

そう言ってソファに背中を預けて目を閉じる道明寺。
…………眠れていない。
昼間、美作さんから聞いた話が頭をよぎる。

「…………道明寺。」

「……ん?」

あたしの声に目を開けてこっちを見る目が赤い。
眠れないの?
そう聞きたいけど、美作さんとの約束を破るわけにはいかない。

「部屋で休んだら?」
仕方なくそんな言葉しか出てこないあたしに、

「せっかく会えたのに、そんなこと言うなよ。
おまえに会えるかもしれねぇってわざわざこんなとこまで来たけど、マジで会えるとは思ってなかった。」
そう言ってバカみたいに嬉しそうに笑うこいつ。

その顔と言葉に恥ずかしくなって、あたしは乱暴に新聞をバサバサと開く。
そんなあたしの頭をわしゃわしゃと撫でて立ち上がり、共有スペースの一角にある飲み物が並んでいる場所へと行く道明寺。

そして、カップにコーヒーを注ごうとしている。
それを見て、

「道明寺っ!」
と叫ぶあたし。

「っ、なんだよっ、」

「ダメっ!」

「あ?」

「コーヒーなんか飲んじゃダメ。
今そんなの飲んだら眠れなくなるでしょ。」
咄嗟に出た言葉だったけど、この時間のこのアドバイスは不自然ではないはず。

「まぁー、そうだけどよ……。」

「飲むならお茶にしたら?
あ、でもお茶もカフェイン入ってるか。
ジュースは?」

「甘いもんはいらねぇ。」

「……それなら、あんた牛乳飲める?」

「ああ。」

「あのね、寝る前に温かい牛乳飲むと、寝付きが良くなるんだって。
ここには置いてないから、明日でもパックの買っておいて、部屋で温めて飲んでから寝るといいよ。
あたしも時々寝れないときそうしてて、常に牛乳は買い置きしてあるの。」

いつかの雑誌か新聞にあった情報を道明寺に教えると、

「今も?」
と意味不明な質問をしてくるこいつ。

「ん、何が?」

「今も部屋にあるのか、牛乳。」

「あー、あるかも。
持ってきてあげようか?」

そうか、その手があったか……と思い、立ち上がりかけたあたしに、こいつはとんでもないことを言ってきた。

「いや、いい。
おまえの部屋で飲む。」

「…………はぁ?」

「あるんだろ?牛乳。……行くぞ。」
そう言ってあたしの手を取り、歩き出す道明寺。

「ちょっ、ちょっと!
道明寺、行くぞって来れないからっ。
もうこの時間は女子寮にあんた入れないの!」
そう言うと、その事を忘れてたのか知らなかったのか、

「マジかよ……」
と頭をかき回し、悔しそうなこいつ。

「プッ……残念でした。」
そんな道明寺をからかうように笑って、
「持ってきてあげるから、おとなしく待ってなさい。」
と、上から目線で言ってやると、

「……残念なのはおまえの方。
俺がそんな理由でおとなしく引き下がると思うか?」
そう言ったかと思うと、こいつはとんでもない行動に出た。

あたしの手を繋いだまま、飲み物コーナーに置かれているグラスやカップを次々と床に落としていく。
もちろん、ここで使用されてるのは、高級ブランドの食器たち。
そんな1客何万もするものたちを容赦なく床に落としていく。

床に落とされたグラスやカップは派手な音をたてて無惨に割れていく。
「道明寺っ!」
驚いて叫ぶあたしに、

「そろそろ来るころか。行くぞ。」
そう言って女子寮の方に向かって大股で歩いていく。

手を繋がれたまま付いていくしかないあたしは、女子寮の手前の廊下まで来たとき、バタバタとその廊下を向こうから走ってくる足音に気付いた。
道明寺もそれに気付いたのか、すばやく物影に隠れてじっとしていると、あたしたちの前を警備の男性二人と、女子寮と男子寮の寮母である鶴さんが駆けていくのが見えた。

「もしかして、あんた、みんなの気を引くためにグラスを割ったの?」
そう小声で聞くあたしに、

「とりあえず、行くぞ。
急げっ、急げ急げ…………。」
そう言ってあたしの手を引っ張り走り出す道明寺。

その顔が、
無邪気でほんとに楽しそうで、

あたしはそれ以上の文句を飲み込んだ。

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