VOICE〜ボイス 6

VOICE〜ボイス

会いたくて、会いたくて、会いたくて……。
全身の細胞が波立つほど、恋しかった女。

牧野が今、俺の目の前にいる。

ファミレスからの帰り道、

「いつ日本に帰ってきたの?」
と聞く牧野に、

「今日の昼。」
と答えると、

なんの迷いもなく、
「暇なの?」
と聞いてくる鈍感女。

「すげー忙しいに決まってるだろ。」

「……あーそう。それならこんなところで油売ってないで、早く帰りなさいよ。」
そう言う愛しい女は相変わらず甘い雰囲気とは縁遠い。
だから、ちょうど寮の前についたから教えてやる。

「帰ってきたぞ。」

「……はぁ?」

「今日から俺もここの住人。」

「……はぁーーー?」
すっとんきょうな声ととぼけた顔で見つめてくるこいつがすげーかわいくて、牧野の髪をくしゃっとかき混ぜてやりながら、

「これからはおまえの側にいるって言ったろ。」
そう言うと、

すげー小さな声で
「やっぱり暇なんだあんた。」
そう呟くのが聞こえた。

寮生活と言っても、邸とほとんど変わらない。
食事も一流シェフが24時間用意しているし、希望すれば毎日部屋の清掃も入ってもらえる。
部屋は20畳ほどのワンルームとその横にミニキッチン、バス、トイレが付いていて、一人では十分な広さだ。
内装もメープルホテルを手掛けているプロに頼んだだけあって、ホテルのスイートを思わせるような仕上がりだった。

部屋に戻ってきてしばらくボーッとソファに座っていた俺は、
「ふぅーーー。」
と一つ大きく息を吐くと、ベッド脇にある電話の子機を掴み内線電話を押す。
そして、電話を耳に当てたままベッドにゴロンと横になった。

「…………はい?」
3コール目で繋がった。

「牧野か?」
俺の声に固まっているのが分かる。

「…………。」

「おいっ、牧野?」

「なんで、あんた、あたしの部屋番号知ってるのよっ。」

「知ってるに決まってんだろ。
俺を誰だと思ってんだよ。」

「…………もう、ほんとありえないっつーの。」

こいつの声を聞くと、
さっきまで会っていたのに、
…………もう会いたくてたまらない。

目を閉じると、久しぶりに会う少し女らしくなった牧野の姿がよみがえる。
黒髪はそのままで、色気のねえ態度は変わらないけど、薄くまとった化粧やリップ、大学生になった女らしい服装に、胸の高鳴りと嫉妬が沸き起こった。

「…………道明寺?」
急に黙った俺に、少しだけ心配そうに聞いてくる。
「まだ寝てなかったの?」

そう聞かれて時計を見ると、牧野と別れて一時間半もたっている。
ソファでボーッとしている間にそんなに時間が過ぎていたのか。

「ああ。わりぃ、……おまえ寝てたか?」

「……うん。」

「わりぃ。」
もう一度謝る俺に、今度は確実に心配そうに聞いてくる。

「何かあったの?」

「…………おまえの声、聞きたくなった。」

いつだってそうだ。
こいつに出会ってから、こいつに惚れてから、
俺は溢れる感情を抑えることが出来ない。
声が聞きたい……なんてキザな台詞を、躊躇なく俺に言わせる女は……おまえしかいない。

「さっきまで話してたじゃない。」
照れてるのか、ぶっきらぼうに言うこいつに、
電話した真の意味を伝える。

「牧野……、さっき言い忘れたけどよ、」

「……ん?」

「おまえが好きだ。」

電話の向こうで牧野が息を飲むのが分かる。

「どうしても今、伝えたかった。
……また明日な牧野。
…………おやすみ。」

「………ん………おやすみ。」
小さく呟いて切れる電話。

ベッドに横になりながら、電話を片手に持ち、
高い天井をあおぐ。

あぁ。
ますます自らどつぼに嵌まった。
声だけでも聞きたいと思ってかけたはずなのに、
声を聞いた今は、会いたくて仕方がない。

NYにいた頃とは違った意味で、今日も眠れそうにない。

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