VOICE〜ボイス 1

VOICE〜ボイス

新連載、VOICE~ボイスです。
私は花男の原作もドラマも好きですが、そのなかでも、ドラマ(シーズン2)で、つくしが道明寺に携帯で電話するシーンが好きです。

NYから帰ってきた道明寺にゴールドの携帯で泣きながら電話して、
「もうこの電話から道明寺の声は聞けないんだと思ってた。」
みたいな台詞を言いますよね。
そんな涙声のつくしに、
「泣いてるのか?」
と優しく話す司。

あのシーンがとても好きです。
切ないけど、想い合ってるふたり。
どんなに想いを抑えようとしても、声(ボイス)を聞いたら、溢れ出す相手への気持ち。

そんな二人を書いてみたいなぁと思い、このタイトルにしました。
切なさは半減して、ヤキモチやジレジレ感で甘さを出したと思ってまーす。

お付き合い頂ければ幸いです。
よろしくお願いします。

道明寺が高校卒業と共にNYに旅立って3年。
「4年後、必ず迎えに来る」とあたしに言ったあいつは、今でもその約束を覚えているだろうか。

英徳大学2年のあたしは、このエリート学校に隣接して新しく作られた「寮」で生活している。
寮といっても、一般的なものとは次元がかけ離れていて、さすが金持ち集団の学校だけあり、その寮の広さも内容も格が違う。

そんなところになぜあたしが入れたのかと言えば、それはもちろん、あいつのおかげ。
2年前に新設された寮の理事長は、あいつの母親である道明寺楓氏。
はじめは反対してたあたしたちの交際も、荒れた生活から更正していく息子を見て、徐々にあたしを受け入れてくれ、今ではかなり打ち解けた仲になった。

そんなあたしは、相変わらずバイト生活はしてるものの、それは生活費の為じゃなく、将来の蓄えや社会経験としてやっているだけで、昔のように切羽詰まった環境でもない。

パパもママも定職について牧野家は安泰の今、
あたしがこの寮に住む理由はどこにもない。
だから、何度も楓理事長に
「寮から出て、マンションを借りる」と言っているのだけれど、
「それはダメよ。
あなたは成績優秀者が与えられる寮の優待生なんですから、このまま寮にいてちょうだい。
それに、司から頼まれているの。
あなたを悪い虫から守るようにって。」

いつもこんな風に言ってあたしの話を受け入れてくれない理事長は、
…………きっと知らない。

あたしと道明寺が、この1年、全く連絡もとっていないだなんて。

道明寺がNYに行くとき渡されたゴールドの携帯。
「俺様専用だから、なくすなよ。
毎日かけるから、いつも持ってろ。」
そんな言葉通り、NYに行って1年はほぼ毎日かかってきたその携帯。

それが、ある時から3日に1回になり、会話もよそよそしい。
何かを言いかけてやめる……といったことが続き、そのうちに1週間に1回、10日に1回。
確実に減っていったあいつからの電話。

そして、2年がたった3月。
春休みにバイト代を使って、思いきって道明寺に会いにNYまで行った。

そこで、あたしは気付いた。
道明寺の隣にいつも金髪の愛らしい女性がいることを。
はじめのうちはその子が道明寺を追いかけ回してるように見えたけど、そうじゃないんだと分かったのは、道明寺がその子にあたしを紹介したときだった。

「日本から来た、友達だ。」

その言葉で、今までの電話のよそよそしい雰囲気や、何かを言い出せずにいる態度、それらすべてに納得が言ったあたし。

「道明寺、きちんといってくれればよかったのに。」

「あ?」

「彼女……なんでしょ?」

あたしが、日本語が分からないようでキョロキョロとあたしたちを見つめるその子に目線を移してそう言うと、

「っ!ちげーよっ、バカ誤解すんなっ、」
と声を荒げる道明寺。

「じゃあ、なんで?
あたしがNYに来ることも事前にあんたに伝えられないほど、なんであたしたちは遠くなっちゃったの?
きちんと分かるように説明して。」

こんなこと言いたくなかった。
こんなこと聞きたくなかった。
けど、こんな惨めなことを聞かないと終わらせられないほど、あたしには大事な恋だったから。

「…………ごめん。俺がわりぃ。」

それが、あたしたちが最後に交わした言葉。

机の一番下の引き出しに今も眠ったままのゴールドの携帯。
ここ1年、触れてもいなかったそれを、久しぶりに取り出して眺める。

もう鳴ることもないその携帯を手にとって、あたしは部屋を出た。

トントン。
「どうぞ。」

「失礼します。」

この時間なら理事長室に顔を出しているだろうと目論んで、楓理事長に会いに来たあたし。

「牧野さん?どうしたの?」

「理事長、お話があります。
前からお話ししていたことですが、私この寮を出ることにしました。」

「それは、」

「もう決めたんです。
優待生の件はありがたいお話ですが辞退させて頂きます。
それと、……理事長には言ってなかったんですけど、あたしと道明寺は……だいぶ前に別れたんです。
だから、理事長のご厚意にこれ以上甘えるわけにはいきません。
来月、出ていく予定ですので……」

そこまで言ったとき、突然理事長が不適な笑みを浮かべて言った。

「おかしいわね。
昨日、司から電話があったけど、別れたなんて言ってなかったわ。
それどころか、俺が帰るまで牧野を寮から出すなって怒鳴ってたわよ。」

「はぁ?」
意味がわからず、変な声が出るあたしに、
理事長がとてつもない事を言った。

「来月から司もこの寮に住むことになったわ。
3年ぶりの日本よ。
よろしくね、牧野さん。」

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