限りなくゼロ 18

限りなくゼロ
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俺たちは、出会って5年目にして、
ようやく結ばれた。

俺の強引な片想いから始まったこの恋は、
いつしか実を結び互いを想うように変化したが、
ここまで来るのに、あまりにも長かった。

そして、やっと巡ってきたこの機会にも俺は躊躇せずにはいられなかった。
牧野の腰のこともあったが、それ以上に考えることは、もうすぐ離れ離れになる俺たちが関係を結んでいいのだろうかということ。

もちろん俺は、牧野しか考えらんねぇ。
それはこれからも揺るぎない想いだったが、
牧野にとっては…………。
そんな俺らしくもない弱気な考えが頭をよぎり、
約束の日に牧野の部屋を訪れた俺は、その時点でもまだ迷いがあった。

けど、そんな俺の迷いを一瞬にして吹き飛ばしたのは、やっぱり牧野の強烈な言葉だった。

「道明寺のはじめてをあたしにちょうだい。」

これから何年離れて過ごすか分からない俺たち。
もしかしたら、違う未来が待っているかもしれない。
そんな風に牧野も俺と同じことを考えたらしい。

そして、自分の気持ちに正直になったとき、
俺と結ばれたいと思ってくれたと。

その結果があの言葉だ。
牧野らしい男前な言葉。
それを聞いて俺の迷いはなくなった。

「俺もおまえのはじめてが欲しい。」

そうして、俺たちは結ばれた。
実際、病み上がりの牧野を相手に、相当手加減してやったつもりだ。
暴走しそうな自分を必死に抑え、牧野のペースに合わせてやったが、それでも1回で満足出来るはずもなく、何度も求めて牧野を困らせた。

そして、何度も何度も囁いた。
「愛してる」と。

それから20日後。
俺はNYに飛び立った。
F3には牧野の安全を頼み、滋には二度とコンサートには連れて行くなと念を押し、桜子には牧野に悪い虫が付かないよう見張ってくれと香水の賄賂まで送った。

そして、最後に牧野には一番大事なことを伝えた。
「今度会うときは、俺と恋愛できるようにしておけよ。
おまえなら出来る。頑張れ。」

あれから4年がたった。
牧野は現役での司法試験合格は叶わなかった。
そして、2度目のトライでもその夢には届かず、
今回が3度目の挑戦だった。

この一年はバイトもほとんどせずに、勉強に明け暮れていたとあきらから聞いていた。
だから、なんとか今度こそあいつの喜ぶ顔がみたいと思った。

この4年、NYで生活してきた俺。
ババァの期待通り、必要な資格もスキルも身に付けてきた。
そしてただひたすら牧野のことを想ってきた。

俺が次に日本に帰るときは、あいつが合格したときだと必死に自分に言い聞かせ、俺が今出来るベストを尽くしてきた。

そして4年目。
まだ日が明けない薄暗い部屋に携帯の音が響いた。
そこには、久しぶりの類の文字。

「もしもし。」

「司?寝てた?」

「類か。…………どうしたこんな時間に。」

「司、受かったよ。」

「……あ?」

「牧野、試験に受かったよ。」

「…………マジかっ!」
ガバッとベッドに起き上がった俺は、かすれた声で聞き返す。

「うん。牧野、やったよ。
司もそろそろ帰ってくるんでしょ?」

「…………。」

「司?」

「…………あぁ。」

「もしかして、司、泣いてる?」

「うるせー、泣いてねーよっ。
でも、…………マジで…………よかった。」
全身から力が抜けていく。

「牧野から連絡させようか?
どうせ、牧野のことだから司と連絡取り合ってないんでしょ?」

この4年、ほとんど牧野とは話していない。
唯一、お互いの誕生日だけ、簡単なメールのやり取りをしてきた。
声を聞けば会いたくなるし、頑張ってるあいつに余計なことを言っちまいそうで、なんとか耐えてきた。

「いや、俺から連絡する。」

「うん。わかった。
じゃあね、司。」

「おう。
……類っ!サンキューなっ。」

「はいはい。じゃあね。」

牧野が試験に受かった。
あいつにとって、ここからが本当の正念場になるだろう。
でも、だからこそ、
俺はあいつの力になりたい。

って、かっこいいこと言ってるが、
本当は、
牧野に会いたくて会いたくて堪らない。

俺は再び携帯を手に取ると、
慣れた手つきでボタンを押した。

「おう、西田か。
朝からわりぃ。
すぐに日本に行けるよう手配してくれ。」

そう用件だけを伝えて、シャワー室に向かった。

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