限りなくゼロ 1

限りなくゼロ

新連載です。
記憶喪失からの…………。
ハッピーエンドはお約束します。


1年半前、不慮の事故で記憶をなくした俺。
皮肉なことに、なくしたものはたった一つ。
愛する女の存在だった。

やっと、気持ちも通じ合いババァの許しも得て順調な交際をスタートさせようとしていた矢先の事故。

完全にあいつの記憶をなくした俺は、それまで必死に守り温めてきた俺たちの関係を自ら手放し、一瞬にして俺たちの歯車を狂わせた。

そして、1年半後。
激しい頭痛とともに記憶を取り戻した俺。
だが、俺のとなりにはあいつではない女の姿があり、あいつの隣にも俺が戻る場所はなかった。

そう、俺らがあの頃に戻ることは、もう

限りなく…………ゼロに近い。

「てめぇー!!また来たのかよっ。
いい加減にしろよっ、目障りだ!
とっとと帰れっ。」

記憶をなくした俺を見舞いに、毎日顔を出すうぜぇ女。
牧野のことをそんな風に思っていた俺は、毎日毎日酷い暴言をあいつに浴びせた。

それでも、笑い、時には怒り泣きながらも、欠かさず見舞いに来た牧野。
そして、それは俺が退院してからも続き、学校が終わる時間に合わせて邸にやって来るようになった。

はじめの頃は、俺もいちいち反応して帰れと怒鳴り付けていたが、半年を過ぎた頃にはあいつの存在自体を無視するようになった。

そして、高校生だったあいつが、俺らと同じ英徳大学に進学し、キャンパスでも度々顔を会わせるようになってからは、どうにかあいつを俺から遠ざけたいとその一心で、…………他の女を利用した。

俺が入院していた頃、同じ階のVIPルームに叔父の見舞いで度々顔を出していた奴がいた。
名前は佐々倉あずさ。
俺らとは幼稚舎からの同級生で、実家は佐々倉建設。都内大手の建設会社の一人娘だ。

高校はイギリスに留学していたため、顔を合わせるのは3年ぶりだったが、昔から他の女たちとは違ってクールで落ち着いた性格のため一緒にいてもさほど苦にならない女だった。

入院生活の閉鎖的な空間で、俺とあずさは自然と距離が近くなり退院してからも邸に呼んだり、大学でもよくつるむようになっていった。

叔父の見舞いで病院に来ていたあずさは牧野とも何度か顔を合わせている。
そして、俺がよく口にしていたように、牧野のことを「類の女」だと思い込んでいた。

いや、もしかしたら もう思い込みなんかじゃねーのかもしれねぇ。
俺がさんざん罵倒し、無視したこの1年半、常に類は牧野の側に寄り添っていた。

はじめの頃こそ、
「俺の女じゃない。早く思い出さないと司、後悔するよ」
そう俺に忠告していた類だったが、いつからかその忠告もしなくなっていった。

それでも、牧野は諦めなかった。
どんなに俺が怒鳴っても追い返しても、次の日には笑って俺の前に現れた。
今思えば、どれほど牧野を傷付けてきたか……。
あの頃の俺にはそんなあいつの気持ちを気遣うことなんてこれっぽっちもなかった。

それだけじゃなく、俺は更に徹底的にあいつを追い込んだ。

記憶をなくして1年たった頃、相変わらず我が物顔で邸に現れ、タマや使用人と親しく話し、俺の様子を伺いに来る牧野にうんざりしていた俺は、
最悪な計画を立てた。

それは、あずさとの密会を見せることだった。

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コメント

  1. しろ より:

    こんにちは。移動したサイトでは新しいお話は書かないのですか?未完成の小話の続きがみたいです。

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