小話 (坊っちゃん 3)

小話

メイド服に着替えたあたしに、

「洗って漂白してきてあげるから、ここでしばらく待ってておくれ。」
そう言ってタマさんが部屋を出ていく。

久しぶりに会ったのに、相変わらずタマさんに迷惑ばかりかけて申し訳ない。
でも、この状態から抜け出すには、タマさんにお願いするしかない。

一人おとなしく部屋で流れるテレビを見ていると、無性にトイレに行きたくなってきた。

タマさんの部屋から一番近いトイレはどこだろう。
長い廊下の左?それとも右か?

道明寺が使っている東部屋なら何度か行っているので見慣れているけれど、タマさんの部屋がある西のエリアにはほとんど足を踏み入れたことがない。

恐る恐る部屋を出てトイレを探して歩くと、廊下の突き当りに発見。
まるで高級ホテルのトイレのような豪華さに、
「あたし、ここで暮らせるんですけど。」
なんて、思わず言葉が漏れる。

用を足し、トイレの鏡にメイド服姿の自分が写ったのを見て、いたたまれず慌てて部屋に戻ろうとしたその時、

「あのっ、ちょっとお願いしたいんですけど。」
と、後ろから声がした。

「……え?」
ゆっくりと振り向くあたしに、

「部屋のベッドメイクお願いしてもいいかしら。」
と、こんがり日焼けした肌が魅力的な女性が部屋から顔を出して言った。

「えっ、あのー、あたし、」

「昨日、朝帰りしたからさっきまで寝ていたの。
こんな時間にごめんなさい。でも、お願いできる?」

そう言ってイタズラっ子のように笑う彼女を見て、あたしは思い出す。

あっ、道明寺と写真を撮られていたのはこの人だ。

「あー、えーと、………はい。」
とりあえずそう答えたものの、どうしたら良いものか。
タマさんはまだ帰ってきていない。

メイドさんに頼みに行こうか。
でも、あたしがこんな格好なのが皆にバレる。

高速フル回転で考えるも、結局答えは見つからず、
昔の記憶を頼りに、ベッドリネンが置いてある小部屋を覗いてみると、今もそこは昔のまま。

しょーがない。
誰にも見つからずにベッドメイクだけして帰ってこよう。

あたしは、そこにある一式を手際よく抱えると、彼女の部屋へと向かった。

西のエリアは確か客間だと昔タマさんから教わった記憶がある。

ひかるさんらしき女性の部屋も2つ続きの部屋があり、奥がベッドルームになっていた。

キングサイズのベッドは一人でメイクするにはかなりハードで、一通り終わった頃にはぐったり。
とにかく、早くタマさんの部屋に戻ろう。

そう思って、ベッドルームの扉を開けかけたその時、

「司、おかえり〜。」
と、ひかるさんの声が響いた。

ヤバっ!
道明寺がそこに?
完全に固まるあたし。

「うるせ、司って呼ぶな。」

「いいじゃない、別に。減るもんじゃないし。
メール見た?」

「おまえさ、仕事中に何度もメールしてくんなっ。」

「なによ、名前は呼ぶな、メールはするなって
冷たいんだから。
そんな所に立ってないで、部屋に入ってよ。」

「入らねーよ。文句言いに来ただけだ。」

「いいから早くこっちに来て。」

「うっせぇ、女の部屋には入らねぇ。」

そんな二人の会話に息を潜めながら聞き耳をたてるあたし。

「とにかく、メールはするな。
何か用があるならタマにでも伝えておけ。」

「急ぎの用なら?
仕事中に返信くらいできるでしょ。」

「しねーよ。
返信するのは『彼女』からのメールだけだ。
余計なメールで、あいつからの連絡が埋もれるのは嫌なんだよ。」

道明寺から『彼女』なんて言葉を聞くのは初めてで、
それがあたしの思い違いでなければ、『彼女』とはあたしのことだろう。

「またそれ?
何かあるたびに牧野、牧野って、彼女のことばっかだけど、たまには久しぶりに帰ってきたあたしの事もエスコートしてよ。
彼女に言っちゃおうか〜?あたしのファーストキスは司だってこと。」

ひかるさんのその言葉に、思わずビクッと体が跳ねる。
その瞬間、持っていたシーツ類があたしの手から落ちた。

慌てて落ちたそれらを取り上げようとグイッと引っ張た時、シーツの端を踏んでいた足も同時に引き上げられ、絡まるように巻き付く。

危ないっ!そう思った時は遅く、
シーツに足が絡まった状態で後ろに思いっきり尻もちをつくあたし。

「痛っ!」
自分にだけ聞こえる大きさで呟いたはずなのに、

「あっ、メイドさんにベッドメイク頼んでたんだった。」

と、ひかるさんの声がして、ベッドルームの扉が開かれた。

「あら、大丈夫ですか?」

座り込むあたしにひかるさんが声をかける。

それと同時に、
「おまっ、何やってんだよ!」
と、一番知られたくないこの人に見つかった。

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