小話 (坊っちゃん 1)

小話
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まずい…………、

これは、完全にまずい…………。

昼過ぎのオフィス。
西田が一冊の週刊誌を片手に苦い顔で俺の前に現れたのが10分前。

何も語らない西田からその週刊誌を受け取り開いてみると、そこには見開き5ページにもおよぶ俺とあいつの写真。

2週間前、何度もしつこく誘ってくるあいつを助手席に乗せて、深夜、人がまばらになった頃を見計らい都内の映画館へと入った。

あいつが予約していた席は、まさかのカップル席。
深くため息をつく俺をよそに、むちゃくちゃハシャグあいつに、『しょーがねーか。』と笑みが漏れたのをカメラマンは見逃さなかった。

週刊誌に載っている俺とあいつの写真は、見るものにとってはどこからみても仲のいいカップルにしか見えねぇ。

頭をワシャワシャとかき混ぜながら週刊誌を乱暴に閉じた俺に、西田が言った。

「…………牧野さんにはひかるさんのことを?」

「……話してねぇ。」

「では、今ごろ……。」

ああ。
たぶん、牧野の耳にもこの写真のことはもう届いてるだろう。
週刊誌に載れば、いつものようにテレビやネットも黙っていない。
今ごろは俺のスキャンダルをこと細かく伝えているに違いない。

時計を見ると、11時半過ぎ。
あいつは仕事中だろうけど、いてもたってもいられずメールを入れる。

「今日、会えるか?」

5分後に
「会えない。」の文字

「少しでいい、話がしたい。」

「話すことない。」

ヤバいだろ、あいつは完全に機嫌がわりぃ。

そうこうしているうちに12時を回り、
昼休憩に入ったはずの牧野に電話を入れる。

「もしもし。」

「俺だ。」

「なに?」

「おまえ、見たか?そのぉ、俺が載ってる雑誌だけどよ、」

恐る恐る聞く俺に、

「浮気現場のスクープ写真のこと?」
なんて、言いやがるこいつ。

「おいっ、誤解すんなっ!
おまえに言いそびれてたけどよ、あいつは俺のいとこで、」

「へぇー、そうなんだ。
二人でカップルシートに座るほど、さぞ仲良しなんでしょーねぇ。」

やめろ、その棒読み。
いつも嫉妬でキレるのは俺の方で、
こんな風におまえに静かにキレられると
まじでこたえる。

「牧野、会おうぜ。」

「嫌。」

「頼む。」

「バカ。」

そう言ってプツリと切れた電話。
それを眺めながら、

「結局、会えるのか?会えないのかよ。
はぁーーー。自分を思いっきし殴りてぇ。」

そう呟く俺を、気の毒そうに西田が眺めていた。

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