バカな男 16

バカな男

久しぶりに抱き締めた牧野の体。
いつもの『あの』香りがして、安心するとともに嬉しさが込み上げる。

牧野を腕の中に閉じ込めたまま、俺はどーしても気になってしょーがねぇことを口にした。

「なぁ、牧野。昨日のあいつ、誰?」

「えっ?あぁ、同僚。」

「同僚?……どんな関係だよ。」

「だから、ただの同僚だって。」

「あいつおまえのこと好きなのかよ。」

「違う違う!彼は新婚ホヤホヤなの。
あたしなんか、眼中にナイナイ。」

「じゃ、なんでおまえらあんな時間に一緒にいたんだよ。」

「あー、だから…………やっぱり誤解してたよね。生徒にちょっと色々あって、遅くまで学校にいたのよ。だから帰りは送って……道明寺っ?」

急に抱きしめる腕に力を入れた俺に、牧野は声をあげる。

「すげー……焦った。あれ見て、俺すげぇ焦った。あいつと付き合いはじめたかと思って。」

俺がそう言うと、今度は牧野の方からぎゅっと俺に抱きついてきた。

「道明寺。…………あたしわがままだけど、いいの?」

「あ?」

「あたし、あんたが……好き。
忘れようと頑張ったけど、どうしても好きなの。でも、あたしわがままだから、あんたにも同じように好きでいて欲しいし、ちゃんと伝えて欲しい。前みたいな関係は……嫌なの。」

そう言う牧野。
俺は抱きしめる腕をほどき、正面からこいつを見つめ、

「牧野。俺はおまえに出会ってから、おまえのことだけを見てきた。
それはNYにいるときも変わらずにずっとだ。
けど、好きだ、会いたい、愛してるって電話で口にすると、ほんとにおまえを抱きしめたくなって……辛かった。
だから、……ごめん。おまえを傷つけてごめん。

俺はおまえをずっと愛してる。

おまえは?」

俺の問いに

「あたしも……愛してる。」

そう言って、はにかんで抱きついてくる牧野。
俺が大好きな表情で一番いって欲しい言葉を言いながら。

ソファに座る俺と、床に膝をついたままの姿勢で抱きついてくる牧野。
俺の足の間にこいつの体があり、俺はそのまま牧野を引っ張りあげて、膝の上に座らせる。

膝の上で横抱きにされた牧野は、
「道明寺っ!」ってバタバタ暴れるが、

「足が痛ぇから動くな。」っつーと、ならおろせっだの言い張ってるが、
顔の高さが同じになったことを良いことに、俺はもう一度牧野を抱き寄せて、首もとに顔をうずめた。

俺が送った香水の香りだけじゃなく、牧野本来の甘い香りがして、離れられない。
そのまま首に唇を押し当てると、

「ちょっ、道明寺っ。」と、焦った声を出すこいつ。

「何もしねーよ。」

「……してるでしょ、もうそれが。」

そんな牧野を横目に、俺は唇を耳へと移動させる。牧野のやわらかい耳たぶをペロリと舐めながら、もう一方の耳を手で優しく愛撫すると、牧野の体がビクッと震える。

耳を舐めながら、手を首から鎖骨へと這わせると、

「道明寺、ダメッ。」と甘い声。

あぁ、わかってる。おれもダメかもしれねぇ。
このままこいつに触れてると、抑えがきかねえ。
いくら個室だからって、こんな場所じゃ牧野を不安にさせるのはわかってる。

俺はそのまま牧野の耳元で、

「このまま、メープルに部屋とるか?
それとも、邸に来るか?」

そう言うと、こいつは少し考えてから頭をブンブン振りやがる。ったく、どうせろくな返事をしないんだろ、おまえは…………と、思ったとき、

「うちに行こ。
あたしのマンションに来て。
…………今日は泊まれるの?」

顔を赤くしてそう言う牧野に、俺は一瞬固まり、ガタガタと理性が崩れていくのを感じながら、牧野を引き寄せ少し強引に唇を奪った。

軽く抵抗してくる牧野の腕も優しく押さえ込み、牧野の甘い口内を舐めまわす。
そのまま、手を服の中にしのばせて、こいつの体を堪能したいと思うが、そんな気持ちをなんとか押さえ込んで、

「おまえの部屋に行くぞ。」

そう言って、俺は牧野を抱き上げた。

部屋に着くと、玄関に入るなり俺は牧野に襲いかかる。
キスをしながら、牧野が持っているかばんを床に置かせ、正面から抱き上げた。
俺の首に腕を絡ませ、両足を開かせると、
「イヤっ、……こんなの……」と、恥ずかしがる牧野。

服はきっちり着込んでいる俺らは、はたから見たらただの赤ちゃん抱っこのようにしか見えないが、俺の腰は完全に硬く膨れ上がっていて、牧野にもそれを押し付けているから、俺の興奮が伝わっているはず。

「んっ…………ふ…………んん。」

牧野からキスの合間に甘い声が漏れはじめ、ここで押し倒したい衝動にかられるが、
俺はいじわるく、

「どこでする?」と、聞いてやる。

すると、
「えっ?どこでって?」と、トロンとした目で見つめてくる牧野に、

「ここの玄関か、リビングのソファ、シャワーを浴びながらっつーのもいいけどよっ。」という俺。

今までもそんなシチュエーションでしたことはあったけど、いつも恥ずかしがって抵抗するこいつ。
はじめは抵抗しても、すぐに気持ちよくなってトロトロになるこいつを知っている俺は、
牧野の「イヤ」は認めない。
むしろ、興奮するセリフ。

「えっ、……普通にベッドっていうのはないの?」予想通りの反応に俺は、

「じゃあ、1回目はベッドなっ。
2回目は俺の好きなところでさせろ。」

そんな会話をしながら、俺たちは奥の部屋へと向かった。

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