久しぶりに抱き締めた牧野の体。
いつもの『あの』香りがして、安心するとともに嬉しさが込み上げる。
牧野を腕の中に閉じ込めたまま、俺はどーしても気になってしょーがねぇことを口にした。
「なぁ、牧野。昨日のあいつ、誰?」
「えっ?あぁ、同僚。」
「同僚?……どんな関係だよ。」
「だから、ただの同僚だって。」
「あいつおまえのこと好きなのかよ。」
「違う違う!彼は新婚ホヤホヤなの。
あたしなんか、眼中にナイナイ。」
「じゃ、なんでおまえらあんな時間に一緒にいたんだよ。」
「あー、だから…………やっぱり誤解してたよね。生徒にちょっと色々あって、遅くまで学校にいたのよ。だから帰りは送って……道明寺っ?」
急に抱きしめる腕に力を入れた俺に、牧野は声をあげる。
「すげー……焦った。あれ見て、俺すげぇ焦った。あいつと付き合いはじめたかと思って。」
俺がそう言うと、今度は牧野の方からぎゅっと俺に抱きついてきた。
「道明寺。…………あたしわがままだけど、いいの?」
「あ?」
「あたし、あんたが……好き。
忘れようと頑張ったけど、どうしても好きなの。でも、あたしわがままだから、あんたにも同じように好きでいて欲しいし、ちゃんと伝えて欲しい。前みたいな関係は……嫌なの。」
そう言う牧野。
俺は抱きしめる腕をほどき、正面からこいつを見つめ、
「牧野。俺はおまえに出会ってから、おまえのことだけを見てきた。
それはNYにいるときも変わらずにずっとだ。
けど、好きだ、会いたい、愛してるって電話で口にすると、ほんとにおまえを抱きしめたくなって……辛かった。
だから、……ごめん。おまえを傷つけてごめん。
俺はおまえをずっと愛してる。
おまえは?」
俺の問いに
「あたしも……愛してる。」
そう言って、はにかんで抱きついてくる牧野。
俺が大好きな表情で一番いって欲しい言葉を言いながら。
ソファに座る俺と、床に膝をついたままの姿勢で抱きついてくる牧野。
俺の足の間にこいつの体があり、俺はそのまま牧野を引っ張りあげて、膝の上に座らせる。
膝の上で横抱きにされた牧野は、
「道明寺っ!」ってバタバタ暴れるが、
「足が痛ぇから動くな。」っつーと、ならおろせっだの言い張ってるが、
顔の高さが同じになったことを良いことに、俺はもう一度牧野を抱き寄せて、首もとに顔をうずめた。
俺が送った香水の香りだけじゃなく、牧野本来の甘い香りがして、離れられない。
そのまま首に唇を押し当てると、
「ちょっ、道明寺っ。」と、焦った声を出すこいつ。
「何もしねーよ。」
「……してるでしょ、もうそれが。」
そんな牧野を横目に、俺は唇を耳へと移動させる。牧野のやわらかい耳たぶをペロリと舐めながら、もう一方の耳を手で優しく愛撫すると、牧野の体がビクッと震える。
耳を舐めながら、手を首から鎖骨へと這わせると、
「道明寺、ダメッ。」と甘い声。
あぁ、わかってる。おれもダメかもしれねぇ。
このままこいつに触れてると、抑えがきかねえ。
いくら個室だからって、こんな場所じゃ牧野を不安にさせるのはわかってる。
俺はそのまま牧野の耳元で、
「このまま、メープルに部屋とるか?
それとも、邸に来るか?」
そう言うと、こいつは少し考えてから頭をブンブン振りやがる。ったく、どうせろくな返事をしないんだろ、おまえは…………と、思ったとき、
「うちに行こ。
あたしのマンションに来て。
…………今日は泊まれるの?」
顔を赤くしてそう言う牧野に、俺は一瞬固まり、ガタガタと理性が崩れていくのを感じながら、牧野を引き寄せ少し強引に唇を奪った。
軽く抵抗してくる牧野の腕も優しく押さえ込み、牧野の甘い口内を舐めまわす。
そのまま、手を服の中にしのばせて、こいつの体を堪能したいと思うが、そんな気持ちをなんとか押さえ込んで、
「おまえの部屋に行くぞ。」
そう言って、俺は牧野を抱き上げた。
部屋に着くと、玄関に入るなり俺は牧野に襲いかかる。
キスをしながら、牧野が持っているかばんを床に置かせ、正面から抱き上げた。
俺の首に腕を絡ませ、両足を開かせると、
「イヤっ、……こんなの……」と、恥ずかしがる牧野。
服はきっちり着込んでいる俺らは、はたから見たらただの赤ちゃん抱っこのようにしか見えないが、俺の腰は完全に硬く膨れ上がっていて、牧野にもそれを押し付けているから、俺の興奮が伝わっているはず。
「んっ…………ふ…………んん。」
牧野からキスの合間に甘い声が漏れはじめ、ここで押し倒したい衝動にかられるが、
俺はいじわるく、
「どこでする?」と、聞いてやる。
すると、
「えっ?どこでって?」と、トロンとした目で見つめてくる牧野に、
「ここの玄関か、リビングのソファ、シャワーを浴びながらっつーのもいいけどよっ。」という俺。
今までもそんなシチュエーションでしたことはあったけど、いつも恥ずかしがって抵抗するこいつ。
はじめは抵抗しても、すぐに気持ちよくなってトロトロになるこいつを知っている俺は、
牧野の「イヤ」は認めない。
むしろ、興奮するセリフ。
「えっ、……普通にベッドっていうのはないの?」予想通りの反応に俺は、
「じゃあ、1回目はベッドなっ。
2回目は俺の好きなところでさせろ。」
そんな会話をしながら、俺たちは奥の部屋へと向かった。
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