バカな男 15

バカな男

西田さんに再び連れてこられた場所は、
ホテルメープル。

西田さんに促され、車をおりると
「私はここで失礼致します。
バーでお待ちですので、煮るなり、焼くなり、
牧野様のお好きなようにして下さい。」

言われた意味がすぐにピンとこないが、そう言うだけ言って、西田さんは帰ってしまった。
残されたあたしは、とりあえずバーに行くしかない。
バーでお待ち?誰が?……首を傾けながらエレベーターに乗り込んだ。

バーに着くと、西門さんが入り口に立っているのが見えた。

「西門さん!」

「おう!牧野、どーした?」あたしの出現に驚く西門さん。

「いや、あのー……西田さんが……」

「あーー。そういうことか。ハハハ。
わかった。そういうことなら、おまえに任せるわ。」

「あのぉ、全然話が読めないんですけど。」
そんなあたしに西門さんは、

「牧野、ちょっとこっちに来い。」

そう言って、西門さんは指をチョイチョイと奥の個室へと向ける。

「……?」
訳がわからないあたしは、西門さんについてその部屋に向かうと、初めて入るその個室の中には、
長いコの字型のソファに寝転がる道明寺の姿。

「西門さん?」

「こいつ、珍しくすげー飲んで、おちた。
西田に迎えに来るよう頼んだんだけど、おまえに託したらしいな、
…………牧野、おまえ司になんかしたのか?」

「えっ?何も…………してないはず?」

「なんだよ、その答えは。
司がこんなになるのは、おまえの事しかねえと思うんだけどなぁ。」

思い当たることが多すぎて、あたしはまともに西門さんの方を見れない。

「牧野…………どーする?司」

あたしは目の前の道明寺を見つめる。

どーするって…………。

その時、西田さんの言葉を思い出す。

煮るなり、焼くなり、…………

「西門さん。あたし、……食うことにする。」

「はぁ?」

「へへっ。いいの、いいの。こっちの話。
……道明寺の事はあたし任せて。」

そう言って笑うあたしに西門さんは、
「これ以上、いじめんなよっ。」
と言って手をヒラヒラさせ帰っていった。

西門さんが帰ったあと、あたしはゆっくりと道明寺に近づいた。
酔って寝てしまったのだろう、あたしが近づいても起きる気配はない。

あたしは道明寺が寝ているソファの横に膝をついて、眠っている道明寺をまじまじと見つめた。

ほんと綺麗な顔だよね。肌もツヤツヤだし、羨ましい。
いつもより呼吸が速いね。酔ってるからかな。
少し痩せた?ごはんちゃんと食べてる?
どうして言ってくれなかったの?
仕事のこと。あんたの口から聞きたかったな。
香水ありがとね。すごく気に入ってるの。
…………ねぇ、道明寺、
あたしのこと……本当に……

「なに泣いてんだよ。」

えっ?その声にハッとして道明寺を見ると、いつのまにか目を覚ましてこちらを見ている。

「なんで泣いてんだよ。
泣きてぇのは俺だぞ?」
すごく優しい声で言う道明寺。

その言葉で、あたしは自分が泣いていることに気付いた。
慌てて、手で涙をぬぐい下を見る。

「泣き顔もかわいいな。」

「っ!……バカ。」

「怒った顔もかわいい。」

「酔っぱらい。」

「口がわりーのもかわいい。」

「バッ…………うっ。」

ソファに横になったままの道明寺と、その横で床に膝をついたままのあたしの目線はちょうど同じ高さ。
その距離はすごく近くて、今にも重なりそうなのに、あたしは臆病で近づけない。

でも、このままじゃ道明寺がNYにいた頃の自分と何も変わらない。
だから、あたしは勇気を出して、
今まで聞きたくても聞けなかった質問をしてみた。

「道明寺…………あたしのこと好き?」

「すげー好き。」

「どこが好き?」

「全部。」

「あい……してる?」

「ああ。愛してる。」

「どのくらい?」

「知りてーの?」

そういうと同時にガバッと起き上がった道明寺は、あたしを強く抱き締めた。

「ここで教えてやろーか?」

「酔っぱらい!」

「酔ってねーよ。
…………おまえの気持ちも聞かせろ。」

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