バカな男 12

バカな男

「あぁ、終わっちゃった。」
自分の声があまりにも悲しげで、その事に少し驚いた。

道明寺をあの公園においてきたあと、どこをどう通って家までたどり着いたのか、はっきりと覚えていない。
気づいたら、自分のマンションの部屋にいて、いつも通り夕飯の用意をしていた。
さっきまでの出来事がなかったことのように、黙々と料理をつくり、ひたすら食べた。

そして、お風呂を済ませ、いつものシングルベッドに横になり、目を閉じたが、思い出すのはさっき見た道明寺の悲しい顔。

「あぁ、終わっちゃった。」

あたしたちの6年。
目を閉じているのに、目の縁から溢れ出す涙。

いつから道を間違えちゃったんだろう。
いつからこの想いは逆転してしまったんだろう。

付き合い始めの頃は、確かに道明寺の想いの方が強かったあたしたちの関係も、年を重ねるにつれ、あたしの想いが道明寺のそれに追い付き、遠距離でも満ち足りた日々だった。

それが、いつの頃からか気づけばあたしの想いの一方通行に変わってしまっていた。
そして、あたしはその行き場のない想いを道明寺に向けることを躊躇し、次第に考えないようにしてしまったのだ。

きっと、道明寺に愛されていないということを認めるのが怖かったのかもしれない。
だって……、
こんなにも愛してしまったから。

二人の関係が『普通』ではないと分かっていながら、ずるずると6年も過ごしてしまった。
最後のNY行きを決めたとき、私は道明寺に『別れ』を言うと決めていた。

でも、言えなかった。
あいつの顔を見たら、どうしても言い出せなかった。
結局何も言えないまま、二日間を過ごし帰り際、どうしても空港まで送ると言う道明寺を説得してマンションで別れた。

また今日から別々の世界へ戻る。
どうせまた、1ヶ月、いや3ヶ月、半年会えないし、連絡さえもしないかもしれない。
だったら、このまま終わりにしよう。
このマンションの扉を閉めたら、あたしたちの6年を終わりにしよう。

もう戻らない。
道明寺と過ごした6年はかけがえのないものだったけど、もう二度と戻らない。

そう決めてあたしは日本に戻った。

はぁーーーー。
次から次へと涙がこぼれていく。

「こんなんじゃ、寝れないじゃない。」

ベッドに横になってたあたしは、寝るのを諦めてサイドテーブルの明かりをつけた。
明日からまた学校。
準備は出来ている。

こうしてても眠れないなら、もう寝るのを諦めて何かをしようと思い、部屋にあるクローゼットを開いた。
明日着ていく予定のスーツとシャツ。
あたしは棚の横からアイロンと台を取りだし、シャツにアイロンをかけることにした。

何かをして気を紛らわしたい。
今は何も考えたくない。

ひたすらアイロンをかけた。
明日の分だけでなく、自分が持っているすべてといってもいいぐらい、タンスの奥からひっぱり出してきて、黙々とアイロンをかけ、終わったらハンガーにかけるという作業を繰り返した。

すべて終わった頃、さっきまでの涙は消え、スッキリとした気分に変わっていた。
大丈夫。これなら眠れそう。
もうあいつの事を考えなくてもすみそう。

そう思いふたたびベッドに横になったとき、
あたしの携帯がメールの着信を告げた。

こんな遅い時間に?
時計を見ると12時半。

そして、開いてみると、そこには
道明寺からの一通。

たった一言、

「月が綺麗だな。」

あたしはそのメールをみて、しばらく固まっていたが、ふとカーテンを開けて空を見上げてみると、そこにはほんとに綺麗な満月があった。

あいつは今、月を見ているのだろうか。
それとも…………、
この言葉に別の意味があるということを知っているのだろうか。

かの有名な夏目漱石が
ILOVE YOU を、
「月が綺麗だ」と、
訳したと言われる話。

今日はやっぱり眠れそうにない。

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コメント

  1. むさ より:

    こんばんは
    はじめまして
    何度も読んだのにおもしろくて、ホームに行けばつづきを読めるのに次の投稿をワクワクと待っています。まんまと策にハマってます

    • 司一筋 司一筋 より:

      わぁ、ありがとうございます。
      今日は仕事も休みなので一気にアップしたいと思いますよー!

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