バカな男 7

バカな男

帰国祝いでいつものメンバーが店に集まった。
あきらが選んだ店はラフな雰囲気の内装で、飲み物も自分でカウンターに頼みに行くというシステムだが、来ている客はさすがあきらが通う店だけあって、名の知れた2世たちが揃ってる。

金曜ということもあり、貸しきりには出来なかったようで、俺ら以外にも結構人が入っていたが、俺が店に入ると、一瞬店内が静かになり、そこにいる全員の視線が俺に集まるのを感じる。
こういうのはもう慣れている。

店の奥で総二郎が手をあげ、
「司!」と呼ぶのを確認し、俺は店の奥に進むと、少し奥まった所にいつものメンバーが揃っていた。
F3と滋に桜子。そして牧野。
来てくれたんだとホッとした束の間、

滋が
「司~久しぶりぃ。帰国おめでとー。
1年前にパーティーで会ったきり、全然会ってなかったよねー。
まぁ、付き合ってたつくしとも一年以上会ってないんだから、滋ちゃんと会わないなんてあたりまえか~。」
と、相変わらず空気の読めねぇ発言をしやがる。

「ちょっと!滋さん、やめてくださいよ。」
桜子も止めるが、

「ん?何が~?」と、キョトン顔の滋に

「わざとじゃねーのが、一番タチがわりー」
と、あきらも頭を抱える。

でも、その滋のKY発言で何故か場の雰囲気が柔らかいものに変わり、俺も牧野に視線を移し
「おう。」と声をかけると、
「おつかれ。」とあいつも返してくれる。
そんな小さなことが今はすげー嬉しい。

それぞれが飲み物を頼みに席を立ったり、知り合いに声をかけられたりしている内に、自然にF4が店の奥のソファに座り、女3人は店の中央にあるカウンター近くのテーブルで話しこんでいる。

俺はどーしても牧野の姿を目で追っている。
今日のあいつは黒のシャツワンピースと少しヒールのある華奢なブーツ姿。
いつもより大人っぽい雰囲気で俺は目が離せねぇ。

その時、となりで
「クスクス、司、見すぎ。」と、類が笑う。

「んだよっ。」

「そんなに見つめたら、牧野に穴あくよ。」

「うるせー。なあ、類。あいつらあんなに仲良かったか?」

「あー、大河原と、三条と牧野?」

「ああ。」

「司がNYに行ってから、三人でよく集まってたよ。」

俺の目の先にいる3人。
立場も性格も丸っきり違うタイプなのに、すげー楽しそうにケラケラ笑いあって仲が良い。
俺はそんな3人を見て、あることに気付いた。

あいつの笑った顔を見るのは久しぶりだ。
小さく微笑んだり、はにかんだりする顔ではなく、声を出して心から楽しそうな
『牧野らしい』笑顔。

その笑顔が大好きだったはずなのに、もう何年も俺の前でさせてやることが出来ていねえ。
その事に今気付かされた俺は、すげーショックだった。
これ以上牧野を見ていることが出来ず。右手で目を覆い、頭を垂れた。

『やっぱり、俺にはもう無理なのかもしれねぇ。俺に牧野を幸せにしてやる資格があるのか。』

そんな俺に気付いた類が、
「司、牧野かわいくなったよねー。
今、フリーなら俺、立候補しちゃおうかな。」
と、言ってくる。

「類、ふざけんなっ。」

「ふざけてないよ。だって恋愛は自由でしょ。
あんなに可愛かったら、誰だってほっとかないよ。」

「…………。」

「司、なに怯えてんの?
司らしくない。遠慮なんかしてないで突っ走れよ!それが司だろ。」

「…………。」

「俺はこの間、NYのおまえの家に行って思ったよ。司は何も変わってなくて安心した。
昔みたいに牧野にぶつかりに行けよ!」

「類、おまえ…………。」

「司が粉々に砕け散ったら、次は俺がもらいに行くけどね。」

「てめぇー。やっぱり殺す。」

ハハハっと笑いあう俺ら。

「おまえらいつの間に仲直りしたんだよっ。」
「俺らの知らねぇところで何があった?」
と、お祭りコンビが騒いでるが、

俺は決めた。
俺らしく、俺のやり方で
あいつにぶつかりに行く。

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